例えばイラクがクウェートへ侵攻した1990年8月、私は英国ワッサースタイン・ペレラ社で常務取締役としてM&Aを学んでいましたが、当該事象が起こる前を考えてみるに、日本の全報道機関および日本政府までもが戦争勃発の可能性について否定的見解を述べていました。ところが同時期の欧米諸国の論調はそうしたものとは全く違っており、結果としてクウェート侵攻は現実に起こったのであります。そしてまた日本政府が130億ドルもの多大な資金拠出したにも拘らず、クウェート政府の公式感謝表明の中に我国の貢献に対する御礼など一言も述べられていなかったのです。これ正に、日本という国が島国で且つ長期に亘り鎖国政策を採っていた為か、世界の常識・非常識が十分理解できない国民になってしまった所以でしょう。

その後30年に亘っても世界の非常識が貫かれたが故、30年間賃金が上がらないというような悲劇も齎されました。そして今尚、進化し成長して行かない企業集団が「正常」であるとするならば、これから我国は更に貧しい国になって行かざるを得ないと、危惧の念を抱きます。日本人の特徴の一つと思われるのは、「周りが○○だから」「あの人も○○だから」といった強い横並び意識です。個性なき日本をつくり出す社会のあらゆるシステムは転換されるべきで、全てに多様性ある社会の実現を目指し不断に変革し続けねばなりません。私は、多様性追求の中で様々な創造が齎されると信じています。

編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2024年5月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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