近い将来、水産資源の枯渇による“食糧不足”が起こると危惧されており、世界中でその対策が急務となっている。

魚や甲殻類の細胞を人工的に培養して作られた「培養シーフード」は、こうした食糧問題の解決に役立つ食材として、近年注目を集めている。

世界各国で培養シーフード事業に乗り出す企業が増える中、イスラエルのWanda FIshは、今年5月に細胞培養クロマグロによる、トロ刺身のプロトタイプを発表した。

同社は、持続可能で環境に優しいクロマグロの供給を目指す企業だ。

イスラエル発スタートアップWanda Fish

Wanda Fishは、2021年に設立されたイスラエルのネス・ジオナに拠点を置くスタートアップ企業。

創設者兼CEOのDaphna Heffetz氏を筆頭に、R&D副社長のMalkiel Cohen氏、ビジネス開発副社長のYaron Sfadyah氏など、経験豊富なエキスパートをメンバーに揃えている。さらに、細胞農業の世界的な学術権威であるDavid Kaplan 博士との強力なサポート体制も構築している。

2023年10月には710万ドルのシードラウンドに成功し、総額1000万ドルの資金を獲得した。

環境に優しい、持続可能なトロ刺身を

Wanda Fish Unveils Its First Cell-Cultivated Bluefin Tuna Toro Sashimi (Credit: Noam Preisman)

トロは、マグロの腹部にある部位である。オメガ3脂肪酸を多く含んでいるため、柔らかくバターのような食感が生まれることが特徴だ。

Wanda Fishによる細胞培養クロマグロのトロ刺身も、タンパク質とオメガ3脂肪酸を豊富に含んでおり、本物のトロと同等の栄養価を備えている。

今回発表されたプロトタイプでは、本物のトロと同等の霜降りを実現すること、同様の食感・見た目を再現することを最重要視したと、CEOのDaphna Heffetz氏は述べている。

技術の秘訣は、脂肪形成法にあり

Wanda Fishはトロ刺身の開発において、クロマグロの細胞に脂肪を形成させるという特許出願中の技術と、全体を丸ごと切断する下流の製造プロセスを採用している。この脂肪により、培養クロマグロ全体に絹のような質感と、独特の豊かな風味をもたらすという。

低コストで迅速な製造方法であることに加えて、容易にスケールアップできる点もポイントだ。