SusHi Tech Tokyo 2024内プログラムとして「グローバルスタートアッププログラム」が2024年5月15・16日の2日間東京ビッグサイトにて開催され、世界各国のスタートアップが展示を行った。
スタートアップ大国イスラエルから参加の10社がブースを構えたのは「イスラエルパビリオン」内。パビリオン受付に立っていたのは、イスラエル大使館のダニエル・コルバー経済担当公使だった。それだけイスラエルがスタートアップ支援に注力しているということだろう。
そんなイスラエルパビリオンの一角にあった「Forsea Foods (以下Forsea)ブースのポスターには、うな重の写真が大きくあしらわれている。Forseaが手掛けるのは、うなぎの可食部分の細胞培養。いちからうなぎを育てるのではなく、食べる部分だけを作り出してしまうのだ。
日本企業も投資、レストランとコラボも
Forseaは、イスラエルのフードテックインキュベーターThe Kitchenおよびイスラエル・イノベーション庁の支援を受けて2021年に設立されたスタートアップだ。研究・技術開発および培養プロセス効率改善を続け、2024年1月に培養うなぎとして世界初の試作品を発表した。
この時、東京都内のヴィーガンレストラン「菜道」とのコラボレーションについても公表。菜道のチーフシェフ楠本勝三氏がFoeseaのうなぎ肉をかば焼きと握り寿司に仕上げた。また、同月にはオイシックス・ラ・大地の投資子会社Future Food Fundも、Forseaに対して新規投資を行っている。
今回Forseaブースで試食までは行っていなかったが、Forsea事業開発マネージャー兼バイオロジストの杉崎麻友氏によると、「近々、培養うなぎを使ったテイスティングイベントを開催する予定です」とのことだ。「オルガノイド技術」で自然な細胞と同じ構造を形成
「当社の培養うなぎは、特殊なオルガノイド技術を利用しています。本物のうなぎと類似した構造を三次元で形成する点が最大の特徴です」と説明してくれたのは、創業者兼CEOのRoee Nir氏だ。このオルガノイド技術は同社の研究チームが開発した独自プラットフォーム技術で、特許も取得したもの。
一般的な培養肉の製造プロセスでは、筋肉や脂肪といった求める細胞タイプへと幹細胞を誘導するための分化技術が重要となる。しかし、Forseaのオルガノイドは自発的に分化・成長するのだ。これにより、コストの高い「スキャフォールド(足場)」段階が省かれ、成長因子の使用量も大幅に削減できる(足場とは細胞増殖を促す培養容器などの環境)。
Nir氏曰く、Forseaの培養うなぎ肉は普通のうなぎ肉と同等の食感でありながら、コストも抑えられるとのこと。養殖場などの施設も稚魚も不要で、飼育や成長に関する手間もかからない。培養である以上、薬剤や汚染物質とも無縁。養殖場からの排水で周辺環境を汚染するといった事態も起こり得ない。