UNDP東京事務所は、「博報堂DYホールディングスのご協力」を得て、「NEXUS」を広報するビジュアルに訴える一般向け動画を作成したりしている。

UNDPは、ガザでも当然「NEXUS」が重要になるので、停戦合意とともに速やかにUNDPが主導する開発援助機関が、人道援助を引き継がなければならない、と訴える。

ただし実は国連で「平和」のための活動を担当している部局は、「政務平和構築局(DPPA)」である。つまり本来、国連機関は、平和活動を、「政治」の活動として、理解しなければならない。政治解決なくして、平和はない。そして、望ましい開発もない。それが「NEXUS」に込められたメッセージの一つだ。政治解決の重要性を十分に考慮しながら、人道援助や開発援助も進めていかなければならない、というのが、本来の「NEXUS」のメッセージなのである。

それにもかかわらず、「政治」の話は「難しい」ので、脇に置いてしまってから、ただ単語としての「NEXUS」を、「NEXUS」「NEXUS」と連呼するためだけに参照するのは、「NEXUS」の本来の趣旨からは、むしろ全く逸脱していると言わざるを得ない。

実際のところ、政治解決なくして、ガザの人々の長期的な発展を見通した開発援助など、できるはずがない。過去に日本が援助した病院施設や排水処理プラン等は、イスラエル軍によって木端みじんに破壊されてしまっている。

そのことを全て忘れ去り、ただただ永遠の「早期復旧」の繰り返しに駆り出されなければいけないというのでは、日本の納税者にしてみれば、たまったものではない。

果たしてガザの人々は、イスラエルの軍事占領下で、人間としての尊厳を奪われたまま、ただただ「早期」でさえあれば、「復旧」なるものを喜んで受け入れるはずだ、と本当に仮定できるのだろうか?たとえ大量虐殺を行った占領軍イスラエルの都合の良い計画にそった形になるものであったとしても、「早期」でさえあれば、「復旧」は素晴らしいことだと、ガザの人々ともに、日本の納税者も、喜んで賞賛する、と本当に言えるのだろうか?

パレスチナ代表部が招かれなかったイベントでは、そのような問いは、ほとんどタブーであるかのようだった。

私自身は、以前に別稿で説明したように、そのような「早期復旧」に、批判的な見解を持っている。

長期的な国益にそった日本外交のあるべき姿を考えてみても、拙速に「早期復旧への資金援助の約束」だけに走ることが、賢明であるとは思えない。むしろじっくりと腰を据えて、パレスチナ人や地域の諸国の人々の願いを理解する努力を払い、中東和平のあるべき姿を共に考えていこうとする姿勢を見せることこそが、重要なのではないか。

日本の政治家の方々には、よくよく深く考えてもらいたい。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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