1990年代前半、バブル崩壊後しばらくした頃、金利は今後上がるのだろうか、という議論があった際、新聞の論調は「今金利を上げれば住宅ローンと商工ローンが上がるので個人の家計のみならず、事業者の経営に劇的な影響を与えるからそんな恐ろしいことはできない」が当たり前のように語られていたのです。平たく言えば「私は病人。なのにそんなに鞭打つ気か!」という声であります。問題はいつになったら病人が回復するのか、であります。私は30年たった今、病気はとっくに癒えているのに甘え癖がついた、そして親である政府も甘やかしたと思っています。

「ふざけんな!」というお叱りがあるかもしれません。が、日本に星の数ほどある税金を払えない会社や内向き志向の若者を見ていると平和な日本という良い面に隠れてまるで老後の人生を楽しむお年寄り国家にしか見えないのです。

植田氏が中心となって日銀の過去20-30年の政策について現在検証作業が進んでいると認識しています。私がここに書いている内容そのものになる気がしています。ならば金利が上がる⇒もっと働く⇒企業が儲かる⇒賃上げする の循環を作り出すしかないと思うのです。その点で黒田氏の10年間はまさに失われた10年だったと私は思っています。もちろん、あの民主党政権から引き継いだ当時はひどすぎたので黒田氏はある意味水面下から低空飛行ながら水面上に上がったものの高度が上がらなかった、これが正しい表現かもしれません。植田氏はその点、しっかり、高度をかせぐ政策に移行するだろうとみています。

GDPが2025年にインドに抜かれそうだとIMFが試算しています。23年度にドイツに抜かれ、世界第3位になった経済大国日本は今後、10年ぐらいのうちにさらにランクを下げていく見込みです。かつては数多くの経済や研究、教育分野でトップクラスだった日本を知っている身としてはさみしいというより国家の栄枯盛衰とはこんなに急激なものなのか、と思ったりするわけです。

日本は高齢化社会でもうそんなに歯を食いしばりたくないという気持ちもわかります。しかし、若者もたくさんいるのです。生まれてくる子供たちもそれでも毎年70万人以上いるのです。その子たちに夢や希望がなければ将来結婚もしないし、子供も作らないでしょう。少子化の理由なんて結局、将来の生きる愉しみのビジョンを持てるかどうか、そこにあるのです。小手先の支援金でどうこうなるものではないのです。

とすれば政府が骨太の成長プランや夢ある日本のピクチャーを描く、これが日本をハッピーにする最大のエネルギーであり、そうなれば植田日銀総裁が「利上げしたいなぁ」という気持ちに対して「わかりました!」と答えらえるのではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年4月22日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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