企業にして、自分が現に営んでいる事業分野において、真に創造的な革新を起こそうとすれば、自己を否定するほかない。つまり、現存事業を売却して退路を断ち、その売却代金を新規事業に投資するほかないのである。時間の速さこそが変革の決定的成功要因なのだから、退路を断つことで、新規創造を速める方向への誘因が機能するわけである。
古いものの収益力に依存し、その衰退速度に合わせて新しいものに投資していたのでは、新しいものの創造はできないのみならず、むしろ逆に、古いものの衰退を遅らせ、新しいものの創造を自ら阻む方向にすら、誘因が働きかねないのである。そして、まさに、ここに日本企業のおかれた深刻な状況があるわけだ。
日本企業は、過去において、執念にも近い異常な熱心さをもって、経験知に基づく小さな創造を地道に積み上げることで、一貫性、即ち、連続性のもとで、成長してきた。その成功の背景には、技術進化の速度が十分に追随可能なほどに遅く、そこに連続性があったからだが、今となれば、過去の成功体験は意味を失いつつあり、多方面において、連続性が断たれるべき必要性が生じている。