ズバリ言ってしまえばセブン社にとってヨーカ堂はお荷物であり、鈴木氏が最も触りたくない分野だった、それが放置の原因だろうとみています。つまり鈴木氏の置き土産を井坂氏が処理している、そういう構図であります。また井坂氏も社内政治に翻弄され、好調のコンビニ事業と不調のGMSという光と影を抱える中で人間の性として光の方にどうしてもなびき、井坂氏でさえ、なるべく先送りしてきたのが正直なところでしょう。

ではセブン社が目標とする中間持ち株会社設立、外部資金を取り込み再上場させるというシナリオは可能なのでしょうか?個人的にはこの通りのストレートな展開はほぼないとみています。

分かりやすい例えです。もしも皆さんが自分が持っている不動産なり自動車なりを売却、あるいは何か持ち物をメルカリに出展にする際になるべく高く売りたいので掃除したり、修理したりして体裁よくしますよね。それと同様、企業も傘下の事業を売却するなら徹底したリストラを施し、最終的にちょっとでもよいので黒字にさせることで磨きがかかり、買い手なり投資家なりが現れるものです。

セブン社ではGMS事業に興味ある人も精通する人も限られ、メインストリームではないのです。よって事業をある程度改善改革して見栄えをよくすることすらできないまま中間持ち株会社に移行させられるわけです。平たく言えば不良債権として処理する銀行方式に似ているとも言えます。しかもコンビニ事業に於いてヨーカ堂の食品部門が果たす役割が残っていて全部は手放したくない、そういう自己都合があるため、投資家を募ったり思い切ったリストラがしにくい素地を作ってしまったとも言えます。

ひたらく言えばセブンの経営陣は切った張ったの勝負が下手なのです。サラリーマン経営者ばかりで諸条件全てを満たす円満解決を目指すため、結果として株主が損をする、そういうシナリオになってしまうのです。

セブン社は極めて日本的経営体制であり、内向きで辣腕をふるうことが出来ない状況にあると感じます。この手の経営はコンビニ事業が将来何らかの形で衰退する時代を迎えた際、対応が出来なくなるるリスクがあり、私から見ればどんどん魅力が低減する会社になっていくのだな、と感じてしまうのです。今時一本足打法経営は褒めらたものではないのに、美酒に浸りきっているともいえそうです。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年4月15日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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