社員教育にかける費用が一般的な企業の3倍
もうひとつ、赤城乳業を見るうえで把握しておきたいのは、人的資本経営の取り組みである。人的資本経営とは、経産省の定義では「人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」。3代目の井上創太社長は公式サイトで「規模は小さくても強い会社、いわば『強小カンパニー』を目指してきました」と振り返ったうえで、「強小カンパニーの基礎をなすのは、社員一人ひとりのモチベーションの高さです。社員教育にかける費用が一般的な企業のおよそ3倍というのも、赤城乳業では当然の事なのです」と自負している。
「ガリガリ君アカデミー」と称する社員教育は、義務教育・必須講座・選抜講座・自由講座・各本部教育を5つの柱にして、新入社員研修、フォローアップ研修、ミュージカル研修、海外研修、役員研修、通信教育、インストラクター制度、資格取得支援などを実施。さらに横断的活動による社員教育として委員会制度を設け、ホームページ委員会、PR委員会、5S委員会、教育委員会など13の委員会を運営している。重層的な教育体系だ。
給与水準はどうだろうか。同社発表によれば、社員413名の平均年齢は37歳、平均年収は716万円。年代別の平均は20代505万円、30代719万円、40代856万円、50代908万円である(2023年1月時点)。国税庁の「令和3年分民間給与実態統計調査」に発表された製造業の平均年収は516万円。大企業、中小企業、小規模企業の平均だから企業間格差は大きいが、平均を200万円上回る赤城乳業の年収はかなり高い。
それどころか、アイスクリーム業界大手の大手と比べても遜色がない。公開情報によると、江崎グリコの平均年収は812万円(44.0歳)、森永製菓は769万円(43.2歳)、明治(明治ホールディングスの数値)は1013万円(44.9歳)である。
赤城乳業が志向する「強小カンパニー」の根幹は人的資本経営ともいえるが、この経営が組織全体に「進化を持続する自律性」のような成分を浸透させている印象だ。
(文=Business Journal編集部)
提供元・Business Journal
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