ところが往々にして官の仕事は、何処の国でも大なり小なり、効率性やコストを軽視した中で行われています。ドイツの財政学者アドルフ・ワグナーによる「国家経費膨張の原則」というのが昔からありますが、国家経費は官僚組織が肥大化する中で限りなく増えて行きます。そういう意味で此の原則に当て嵌まる最たるものは、中国共産党と言えましょう。
死ぬ迄その地位に応じ高級邸宅が国から供与され、死ぬまで退任時の報酬・車・秘書付きの生活が保障される――一たび高位のポジションに就いた人は、こうした信じ難いレベルの処遇を維持すべく、組織の防衛に努めます。そして結局それは不自然な形での体制維持に繋がって、無駄を省くどころか際限なく無駄を作り出すのです。中国共産党のようにならないためには、「一利を興すは一害を除くにしかず」と肝に銘じ、省みて省くという姿勢を徹底する必要があるのです。
「一利を興すは」利がありそうなものをどんどん付け加えて行けば良いのではなくて、「一害を除くにしかず」と耶律楚材が言っているように省くことが極めて大事なことだと思います。私自身、経営者として何時もこの考え方を頭に入れています。例えば赤字を垂れ流す事業という一害を除いたら、その垂れ流していた利益を他の一利を興すために持って行けるわけです。私は、こういうことが常に革新を生む一つの条件になる、と思っています。
編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2024年4月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?