特に、②は、トルコにIS-Kの拠点があることを示唆している。トルコ内務省によると、昨年6月1日以降、トルコ国内でIS所属またはISに近い容疑で合計2919人が逮捕されている。ロシア治安関係者は事件後、トルコ側のテロ担当官と協議している。エルドアン大統領は、「テロがどこから来たのか、攻撃者が誰であろうとも、テロは容認できない。トルコはロシアの苦しみを共有している」と語っている。

西側テロ専門家たちは、「イスラム過激派は欧州で大規模なテロを計画している」と警告を発している。昨年末、ドイツのケルンやウィーンのシュテファン大聖堂を襲撃するテロ計画が発覚した。IS-Kによって計画されたものと思われている。彼らはタリバンが政権を握った後、避難の波に紛れてヨーロッパ入りした。6月に入るとドイツでサッカー欧州選手権(6月14日~7月14日)が、その直後、パリで夏季五輪大会(7月26日~8月11日)が開催されるだけに、要注意だ。

ちなみに、パリでは2015年11月13日、同時多発テロが発生した。パリ北郊外の国立競技場スタッド・ド・フランスの外で3人の自爆犯による自爆テロが起き、続いてパリ市内北部のカフェやレストランで銃の乱射や爆弾テロが起きた。そして、パリ11区のコンサート中のバタクラン劇場に乱入したテロリストが銃撃と爆発を起こし、130人が死亡、300人以上が重軽傷を負う史上最大規模のテロ事件となった。

ところで、パリ同時テロ事件では犯人はほとんど自爆するか、突入した警察によって射殺されたが、モスクワのテロ事件では実行犯6人のうち、2人は射殺されたが、4人は逃走後、拘束された。自爆したテロリストはいない。

IS-Kのテロリストらは自爆テロを恐れない狂信的なイスラム過激テロリストという従来のプロフィールとは少し異なっている。彼らは殉教者として死ぬことを回避しているのだ。1人は金銭を約束されていたと供述したという。例外は、イラン南部ケルマン市でのテロ事件では1人のIS-Kメンバーが自爆テロを行った。

アフガニスタン専門家のエリノア・ゼイノ氏はドイツ民間ニュース専門局ntvのインタビューで、「イスラム国は厳格なサラフィ主義者、スンニ派の組織だ。IS-Kは2015年に設立され、その後、数年間、アフガン国内全域を支配したが、その後、タリバンと西側諸国の軍隊によって押し戻された。他のイスラム過激テロ組織とは違って、IS-Kには外国人戦闘員がほとんどいない。彼らは主にタジク民族グループのアフガニスタン人だ」という。

ゼイノ氏によると、自爆テロリストを確保するのは非常に困難で、費用がかかる。これには通常、薬物、そして家族への金銭の約束が必要となる。だから自爆したり、殉教することを回避するテロリストが出てくるという。

英国のキングス・カレッジ・ロンドン(KCL)で教鞭を取るテロ問題専門家のペーター・ノイマン教授は、「IS-K現在最も活発なテログループであり、その起源はアフガニスタンで、過激で暴力的なジハーディスト(イスラム聖戦主義者)武装集団だ。おそらく現在、西側諸国で大規模なテロ攻撃を実行できる唯一のIS分派だ」と説明している。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年3月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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