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走りはしっかりどっしり、しかし重かった
レトロなカラットやRVのリミックスもあり、最後は大団円
走りはしっかりどっしり、しかし重かった
衝突しても無事というより、「衝突しても壊れていい部分をクラッシャブルゾーンとして積極的に潰し、中の乗員を生き残らせる」というGOAの発想は凄まじく、他社も次々と同種の衝突安全ボディをデビューさせていきますが、虚実とりまざった伝説も生まれました。
中には、「クラウンとスターレットが交差点で出会い頭に衝突し、クラウンはメチャメチャだったのに、スターレットはピンピンしていた」という、GOAのコンセプトからすると首を傾げるものまでありましたが、ともかく「GOAの安全神話」は絶大だったのです。
ただ、それまでの「走りのスターレット」は、すっかり影を潜めることになりました。
何しろ135馬力で変わらなかったターボ車「グランツァV」でさえ、4代目「GT」デビュー時より車重が90kgも増え、パワーウェイトレシオはガタ落ちでしたし、ましてや4代目で100馬力だった自然吸気ハイメカツインカム・EFI車は、5代目で85馬力へパワーダウン。
GOAの副次効果で、キャビンを中心に壊れてはいけない部分はむしろしっかりした作りになっていたので、ボディ剛性アップにより実用域での走行安定性などむしろ良くなっており、「踏んで振り回す」には良かったのですが、重すぎてもう速くは走れません。
ワンメイクレースならともかく、各種のモータースポーツや走行会などではじゃじゃ馬でも軽くて速い4代目P80系が引き続きハバを効かせるようになり、「走りのスターレット」は終わってしまいました。
レトロなカラットやRVのリミックスもあり、最後は大団円
しかも1990年代後半にはRVブームで「なんだかんだ5ドアが便利」ということになり、それまで3ドアが主流だったコンパクトカーの販売が落ち込んだ頃、スターレットには一風変わったテコ入れが行われます。
フロントグリルをはじめメッキパーツをふんだんにあしらったレトロブーム便乗仕様の「カラット」、今ならクロスオーバー車として売れそうな、樹脂パーツやカバーつき背面タイヤを背負ったRV仕様の「リミックス」など。
スターレットに限らず、当時のコンパクトカーは大なり小なりレトロかRVにハマっていましたが、実のところスターレットは日産のK11マーチともども別に不人気となったわけでもなく、安全安心を武器に「本当にいい車は黙っていても売れる」というお手本でした。
走り系での魔力を失っても、ベーシックな「ルフレ」など女子向けパーソナルカーとしては安全で小回りも効いてちょうどよかったので、最後まで人気モデルであり続けたのです。
1999年1月には、ターセル/コルサ/カローラIIとも統合した新世代の後継車、初代「ヴィッツ」が登場するも、半年ほどはスターレットも継続生産されます。
そのうち、「後継車も出ている旧型車がヒット」という見出しで、駆け込みのように売れ続けるスターレットの名が新聞で報じられたことすらありました。
1999年8月にはいよいよ販売を終えますが、最後まで愛され、ユーザーに支持され、惜しまれつつ消えていったクルマとして、5代目P90系スターレットはかなり幸せなクルマだったのではないでしょうか?
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
文・MOBY編集部/提供元・MOBY
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