目次
実はホンダにもあった「RV」、シビックシャトル
「FFニューコンセプトセダン」を名乗った初代(1983年)
実はホンダにもあった「RV」、シビックシャトル
名車というほどではないけれども、そのメーカーや時代、文化にとっては何らかの役割を果たした…そんな「忘れがちな銘車」をいくつか紹介していますが、今回はホンダの「シビックシャトル」です。
オデッセイやCR-Vなどの「クリエイティブムーバー」までRV的なクルマを持たないイメージが強く、ステーションワゴンも1991年にアメリカから輸入を始めたアコードワゴンくらいで、ブームに乗り遅れていた感のあった1990年代初めまでのホンダ。
しかし「ホンダのRV」が皆無だったわけではなく、軽1BOXのストリートと並ぶ数少ない例外が、シビックシャトルでした。
「FFニューコンセプトセダン」を名乗った初代(1983年)
ファミリーカーとしてのシビックはどの形が正解か?
初代シビックシャトルがデビューした1983年10月当時のプレスリリースを見ると、シビックが3代目「ワンダーシビック」へとモデルチェンジする際、ホンダ社内でも「次のシビックはどうあるべきか」と激しい議論があった、とされています。
初代のリファイン的なデザインで大きな進歩が見られず、1980年代にはもう古臭くなっていた2代目「スーパーシビック」から、フラッシュサーフェス化で滑らかなデザインへ一新、「残すのは名前だけ」というくらい新しくなる、シビックの正しい姿とは?
若者向けのスポーティな3ドアハッチバックはともかく、若い世代のファミリーカー需要を満たすセダンがどうあるべきかが最大のポイントだったと思われますが、結果的には「じゃあどれも作ってみろ」という結論になったようです。
それで3ドアハッチバックや4ドアセダンと同時にデビューしたのが5ドアのシビックですが、輸出される北米では「シビックワゴン」を名乗り、またシビックPROという商用登録バン仕様もありましたから、実質的にはシビックカントリー後継のワゴンではありました。
新感覚セダンとしての寿命は短く、実質ショートワゴンだった
ただ、上級グレードでは左右独立リクライニングや、前に倒してフラットな広い荷室を断念する代わり、座り心地のいい上質なものとしたリヤシートなど、日本ではワゴンという言葉を使わず、「FFニューコンセプトセダン」を名乗っています。
当時はステーションワゴンが「貧相なライトバンの乗用登録版」と見られており、ミニバンという言葉も一般的ではなかったので、ショートワゴン的なクルマや1BOXミニバンが「新しいセダンの提案」と宣伝していたのに、ホンダも乗った形です。
実際、ホンダの”マン-マキシマム・メカ-ミニマム”という「MM思想」からすると、セダンもキャビンを最大限に取った2BOXスタイルであるべき…という考え方には一理あったように思えます。
ただ、まだ保守的な独立トランクつき3BOXセダンが主流だった時代ですから、その考え方はまだちょっと早すぎたかもしれません。
実際、リヤシートが豪華なグレードは途中で廃止されてしまい、1990年代でいう「ショートワゴン」的なクルマへと変わっていきました。