上流のデザインとは?
ーーデザインという言葉を、外見やフォルムのデザインだととらえられていたんでしょうか。
高野:(工程の)下流にあるデザインだと思われていたんでしょうね。上流のデザインという概念がそもそもなかったのかもしれません。
TVのリモコンでたとえましょう。なぜリモコンにあんなにボタンがついているかというと、たくさんの機能をつけてるから。どうしてそんなに機能をつけるかというと、高く売りたいからです。
技術者がテレビを作っているから、付加価値をつけて高く売ろうとする。下流にいるデザイナーは「ボタンの配置、どうしよう」と考えるデザインをします。上流のデザインは、「そもそもこんなボタン、一生のうち1回も押さない」と「そもそも」を考える。そうすると「使いにくいだけだ」となります。
ーーたしかに日本メーカーの家電が「いらない機能が多すぎる、高い」と、海外で敬遠されることもあるという話も聞きます。
高野:1980年代、日本ブランド黄金時代にアメリカでは冷蔵庫と洗濯機のシェアの6割が日本製で、まさに日本は無敵でした。でも今はシェア、何パーセントなんでしょうか……。まだ日本には「勝つためには技術が必要なんだ」と信じている技術至上主義の人たちが多くいます。マーケットのこと、ブランディングのこと、デザインのことをわからずに技術だけで押し切ろうとして、負けたことに気がつくべきです。
(前編・了)
高野さんがおっしゃる「上流のデザイン」こそが、社名にもなった「デザイン思考」を指すことは明白です。続く後編では、そのデザイン思考について、DG TAKANO社が世界に向けてあらたに提案する「循環システム」についてお話をうかがいました。
インタビュイープロフィール
高野雅彰(たかの・まさあき)
DG TAKANO代表取締役
1978年大阪府東大阪市生まれ。神戸大学経済学部を卒業後、IT企業に就職し3年で独立。高い節水率と洗浄力を兼ね備えた節水ノズル「Bubble90」を開発し、2009年「"超"モノづくり部品大賞」でグランプリを受賞。2010年に社会課題や環境問題等を解決するデザイン会社 「DG TAKANO」を設立。2022年「サウジ・日本ビジョン2030ビジネスフォーラム」に日本代表企業として招待され、世界の水不足の解決に取り組んでいます。
2023年に、洗剤を使用せず、水ですすぐだけで汚れや細菌を落とす食器「meliordesign(メリオールデザイン)」を開発し、日経クロストレンド「マーケター・オブ・ザ・イヤー2023」優秀賞、2023年度省エネ大賞<製品・ビジネスモデル部門>にて「審査委員会特別賞」をそれぞれ受賞。
経済産業省J-Startup企業、日経ビジネス『世界を動かす日本人50』、ForbesJAPAN「ChatGPT後の日本の勝ち方10」などに選出されている。