ところでテスラ社の1-3月の出荷台数が9%減の38万台にとどまったのが衝撃であります。少し前から指摘しているように世界でEVからHVへのシフトが鮮明な中、EVしかない同社の苦境が鮮明になってきています。ドイツ工場は反対派の放火原因による火災で生産停止が響き、中国は同国の値下げ競争についていけなくなりました。中国でかつてブイブイ言わせたVWが壊滅的売り上げ減となっているのと同様、テスラの中国市場は先行き相当不透明だとみています。
これはテスラだけの問題ではなく、巨額の補助金を使ったアメリカのEV政策が曲がり角を迎えたようにも見えます。トランプ氏になれば当然、この政策には興味がなく、補助金など止めるのでしょう。
つまり、アメリカは選挙の行方で政策が180度変わる可能性があり、企業も個人も将来を見通せない状況にあるとみています。
生成AIについては企業でその導入が進んでいるようですが、果たしてどれだけ効果があるのか、企業にどれだけの利益をもたらすのか、不明瞭な感じがします。一方で、その開発には莫大な資金を要し、巨大企業のみがその恩恵にあずかれるのです。ビジネスの機会公平の点からは実にいびつな社会がより明白な形となっているわけです。富める者は富むというより機会の偏在化が経済の変調を生みやすくなり、個人事業主などが活躍できる場所がより狭くなっているとも言えそうです。
労働生産性については1947年から73年までの平均が2.7に対して19年から23年の平均が1.6で数値上は底打ちしているのですが、機械化が進んだこの時代において生産性が上がるのは当然のことなのです。とすればその機械やITなどの部分を除去した生産性の計算が可能であるならば、現在のアメリカの純労働生産性は恐ろしいぐらい低下しているのではないでしょうか?
問題は実質的に低くなった労働生産性からアウトプットされる生産物が高値で売れることがアメリカの経済を支えている点です。日本のラーメンが1000円でアメリカのそれが3000円というのは生産性と費用対労働効率が悪い以外の何物でもないのです。
ということはアメリカが抱える問題とは生産現場に於いてアメリカには競争力がないということにならないでしょうか?今のように対外投資と大手による技術の囲い込みが機能するうちは良いと思いますが、個人的にはもう限界が近いのではないかという気がします。アメリカはサステナビリティが極めて困難な国ではないでしょうか?それでも世界はアメリカを中心に廻そうとすることで歪が出てしまうというのが私の長年見続けてきたアメリカの実態ではないかと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年4月10日の記事より転載させていただきました。
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