ポリコレの具体例
実際どのような動きがポリコレに該当するのでしょうか。人種や性別、職業や服装など10種類のカテゴリーにおけるポリコレの具体例をご紹介します。
人種
ポリコレの代表例のひとつが人種における表現の変更です。
ポリコレにおける人種差別を避けるため、「肌色」という表現ではなく「ペールオレンジ」や「うすだいだい」という表現を使用しているメーカーが増えてきています。肌の色は人種によって異なり、肌色という名称が固定観念を植え付ける可能性があるためです。
参照元:東京新聞Web「ファミマが「はだいろ」表記の下着を自主回収 社員らから「不適切な表現」」
性別
ポリコレの影響により、特定の性別を連想させる呼称が変更されています。
例えば、男性を連想させる「カメラマン」「チェアマン」「ビジネスマン」などの言葉は、それぞれ「フォトグラファー」「チェアパーソン」「ビジネスパーソン」と特定の性別を示さない呼び方に変更されています。
女性を連想させる「看護婦」「保母」なども、現代ではそれぞれ「看護士」「保育士」という名称が使われるようになりました。
宗教
ポリコレにより、多様な宗教への理解を深め、信念を尊重する姿勢を持つことが重要視されています。宗教の選択は本来自由なものです。特に日本では憲法によって「信教の自由」が保障されており、各個人がさまざまな宗教を選択しています。
一口に宗教と言っても、日本だけでも仏教・神道・キリスト教など多くの宗教文化が存在します。多くの人は、自身が信仰している以外の宗教に関しては知識が乏しく、理解も不足しているものです。それ故に、特定の宗教を信仰する方々を傷つけてしまうケースは少なくありませんでした。
参照元:外務省「E.思想、良心及び宗教の自由(第14条)」
職業
ポリコレという考え方が広く認知されることで大きく変化したのが職業の名称です。代表的なところでは、看護婦・看護士を「看護師」として資格名称を統一したり、スチュワーデス・スチュワードという呼称が廃止され、「客室乗務員」「フライトアテンダント」「キャビンアテンダント」に改められたりなどの動きがあります。
性別関係なく従事できる職業である他、業務内容にも差がないためあえて性別によって名称を変更する必要はないのではないかという議論から、特定の職業の表現が見直されています。
参照元:JAL「制服の歴史-JAL客室乗務員」
服装
服装の規定は性別による影響が大きく、女性はスカート、男性はズボンを穿くという考えが一般的でした。ポリコレの考えが広く普及したことにより、服装の規定も差別にあたるのではないかとして注目を浴びています。
代表的なのは学生服です。女子生徒はスカート、男子生徒はズボンと規定する学校が多い中で、一部の学校と地域で学生服の性差をなくす取り組みが実施されています。性的指向への配慮にも関係があるとして、性別による着用規定は不要であるとの考えが広まってきています。
参照元:衆議院「学校における標準服(制服)着用に関する質問主意書」
敬称
名前を呼ぶ際の敬称も、ポリコレの影響により変化が見られています。日本では従来、男性を「◯◯君」、女性を「◯◯さん」と呼ぶのが一般的でしたが、近年は多くの企業や学校で「◯◯さん」と統一して呼ぶ動きが広まってきています。
英語における敬称にも変化が見られています。男性は「Mr.(ミスター)」で統一されていましたが、女性は未婚の場合は「Miss.(ミス)」、既婚の場合は「Mrs.(ミセス)」と結婚の有無によって敬称の使い分けがありました。現在では女性の敬称を婚姻状況で分けるのは差別的だと考えられており、「Mis.(ミズ)」で統一されています。
性的指向・性自認
ポリコレの考え方が広まったことで、多様な性的指向や性自認の人を尊重する動きも見られています。性的指向とは、恋愛や性愛に関する説明をする際に使われる言葉のことです。恋愛や性愛の対象は、異性・同性の他にバイセクシュアルやパンセクシュアルなども存在します。一方、性自認とは、自分の性別をどのように認識しているのかを表現する際に使われる言葉です。
最近ではアンケート回答時の「性別」の欄に、男性・女性・その他という選択肢が用意されていることも多く、性的マイノリティへの配慮がいたるところで見られています。
従来は、異性愛以外の指向性は非難や侮辱、差別の対象となっていました。現在は性的マイノリティのあり方を表現する言葉として「LGBTQ」という概念が広まったことで、特定の性的指向を受け入れる社会へと変化してきています。
参照元:東京レインボープライド2024「LGBTQとは」
科学
科学の一分野である遺伝学でも、ポリコレの影響によって用語の改訂が行われています。代表的なのは「優性遺伝」「劣性遺伝」という表現です。優性遺伝は「顕性遺伝」に、劣性遺伝は「潜性遺伝」に用語の変更が行われています。
元々、優性だから優れている、劣性だから劣っているという意味は含まれていませんが、使われている単語から優劣を連想させてしまうため、中立的な表現に変更されました。
参照元:日本遺伝学会「遺伝学用語改訂について」
医学
ポリコレという考え方の普及によって、医学における疾病の名称も見直しが行われています。今では当たり前に使われている「認知症」はかつて痴呆や痴呆症と呼ばれていました。痴呆に対する偏見や誤解を防ぐため、2004年に厚生労働省が改定を行い、現在では認知症という用語が使用されています。
他にも、1999年に「伝染病」という名称が「感染症」という言葉に置き換えられたり、2023年に「糖尿病」という呼称を「ダイアベティス」変更することが提案されたりと、特定の用語から想起されるイメージによって偏見や差別を助長することを避けるため、さまざまな疾病の名称の見直しが行われています。
参照元:厚生労働省「「痴呆」に替わる用語に関する検討会報告書」
参照元:m3.com「糖尿病を「ダイアベティス」に、新たな呼称案を提案」
求人広告
求人広告を掲載する際も、ポリコレの観点で表現に配慮することが求められています。その際、チェックしておきたいのが「男女雇用機会均等法」です。第5条には、採用において性別を理由とした差別の禁止について記載があります。
この法律では、性別によって対象を限定したり、いずれかの性別を優先したりなど、男女で異なる取り扱いをすることを禁ずるということが説明されています。男女雇用機会均等法を意識することで、ポリコレに反する表現を避けられます。
参照元:厚生労働省「男女雇用機会均等法の あらまし」P8