上脇教授と私とは、2022年5月にも、同年2月に行われた長崎県知事選挙における選挙コンサルタントに対する約400万円の買収の事実について、大石陣営の出納責任者を長崎地検に告発した。

通常、現職知事の当選無効につながる公選法違反事件の告発があれば、「百日裁判」を求める公選法の趣旨からしても、早期に捜査・処分が行われるのが通例だが、長崎地検は、2年近く経過した今も処分を行っていない。政治的影響を懸念して起訴はしづらいが、不起訴にしても検察審査会の申立が行われたら覆る可能性が高いので、不起訴にもできないということで、処分が先送りされているとしか考えられない。

しかし、今回の丸川氏と松本氏の政治資金規正法違反の告発については、早急に捜査して処分をせざるを得ないであろう。2021年分の195万円の違法寄附の実行の日が、安倍派の政治資金パーティーが行われた同年5月以降と考えられ、3年で公訴時効が完成してしまうからである(寄附の日は公表されていないが、検察の捜査で当然特定されているはずだ)。長崎地検の公選法違反事件のように、処分を先延ばしすることはできない。

もし、この違法寄附について、検察が不起訴にしたとすれば、当然、検察審査会に審査申立を行うことになるし、既に述べたように「政治家個人宛の寄附」であることは否定しようのない事実なので、起訴相当議決が出る可能性が高い。

この事件は、これまで「裏金事件」で、「政治家個人宛の違法寄附」に目を背けて裏金議員の処罰と納税を免れさせてきた検察の捜査処分全体を揺るがす「蟻の一穴」になり、それによって、今回の「裏金事件」をめぐる構図が激変する可能性がある。

そもそも、安倍派で所属議員に渡った政治資金パーティーの「裏金」について、裏金議員が処罰されず、課税すらも免れていることが、国民の怒りが炎上し、政治、そして、国会が、ここまで混乱することにつながった。

今回の告発が、このように極めて重要な意味を持つことは、【上記オンライン会見】での私と上脇教授の説明からも、容易に理解できるはずだ。会見に参加した社の中で、実際に会見の記事を出したのは、共同通信と時事通信の配信だけだが、今後も、検察の告発受理、検察の処分、検察審査会への申立など、事態が進展すれば、今回の告発が裏金事件の核心に関わるものと認識されることになるはずだ。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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