未解決事件の多くは情報不足によって捜査が行き詰まっているのだが、それとは逆に情報が多すぎる未解決事件もある。その稀なケースを代表するのが1947年に起きた「ブラック・ダリア事件」だ。
■未解決事件「ブラック・ダリア事件」とは
1947年1月15日の午前10時頃、米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊のレイマート・パークの地元の女性住民が歩道脇に横たわる腰で切断された女性の遺体を発見した。不思議なことに身体から血液が抜かれていたようで辺りに流血はなく、発見されるべくして運ばれてきて遺体であることは明らかだった。
遺体は22歳の女性、エリザベス・ショートで、職業はウェイトレスであったが、若くて美人であるだけに男たちの間では知る人ぞ知る人物でもあった。
検死と共に捜査が開始されたが、犯人捜しは難航した。その一方で被害者が美人であったこともあり、マスコミは大々的に報道し、エリザベス・ショートのことをブラック・ダリアと名づけこの殺人事件を「ブラック・ダリア事件」と呼ぶようになった。
切断方法や血抜きされた遺体の状況から、外科的な知識と技術を持つ者の犯行と思われ、実際に近隣の大学の医学生たちも捜査の対象となっている。
遺体発見から6日後の年1月21日、地元新聞社に犯人を名乗る人物から電話があり、続く1月24日、電話で予告した通り犯人が新聞社に宛てた封筒を郵便局員が発見し郵送することなく警察へ回された。
封筒はガソリンで慎重に洗浄されていて指紋の検出ができず、封筒の中にはエリザベス・ショートの出生証明書、仕事用の名刺、写真、名前の書かれた紙片、表紙にマーク・ハンセン(Mark Hansen)という名前が記された住所録が入っていた。
マーク・ハンセンは地元のナイトクラブや劇場のオーナーである富裕な人物で、ハンセンの自宅にショートが友人たちと滞在したことがあったのだ。
封書を送った人物の真意はわからないが、当然警察はマーク・ハンセンから話を聞き、容疑者としても調査したが容疑は晴れた。
1月26日、地元新聞社は犯人からの新たな手紙を受け取り、書面には1月29日に自首するとあったが、当日になっても自首する者は現れなかった。
友人知人が多いショートだけに、彼女の周囲にいた多くの人物が取り調べを受けたが、決定的な証拠は得られなかった。
警察にはこの事件に関する多くの情報提供者がやってきたというが、その中には犯人を名乗り自首を申し出る者もいたがその話は辻褄が合わない狂言であった。