■今後15年以内に最初の“入植者”がセレスへ向けて旅立つ
5万7000人が居住可能であるというこのメガサテライトだが、新たなメガサイトの建設が完了した際にはいくつでもつなげて運用することができる点も大きなアドバンテージである。メガサテライトを順次建設し、出来上がったものからつなぎ合わせていくことで、地球上の人口を逐次移住させることができるのだ。
「火星の表面積は地球の陸地面積と同等とかなり小さいため、相応の人口と経済拡大の余地を提供することはできません。一方、セレスのコロニーは数百万の生息地まで成長可能です」(ヤンフネン氏)
メガサテライトには2つの巨大なガラスミラーが設置されているという。太陽光を直接反射するミラーの光は、農作物と樹木の成長に利用され、居住区域では人工的に昼と夜のサイクルをシミュレートした人工照明が使われるということだ。
そして驚くべきは計画の迅速性である。ヤンフネン氏によれば計画に着手後15年以内に最初の“入植者”がセレスへ向けて旅立つ日が来るというのである。
人類の火星進出よりも早くセレスのメガサテライトへの移住が実現しそうな勢いであるのだが、フロリダ工科大学の宇宙生物学であるマナスヴィ・リンガム助教授によれば、このメガサテライトには3つの重要な懸念があるという。
重要な要素の1つはリンである。人体はリンに依存してDNA、RNA、ATP(細胞内のエネルギー貯蔵の重要な形態)を作り出しているが、 植民者がメガサテライトでこの重要なリンがどこでどのように入手できるのかについては言及されていない点だ。
2番目の注意点はテクノロジーで、セレスから窒素やその他の原材料を収集するには、惑星の表面を採掘し、岩自体からそれらの重要な要素を抽出する必要がある。このプロセスには自律型採鉱車両の一群と、それらを統率する人工衛星が必要とされる可能性がある。NASAの火星ロボットが地表からわずか5メートルの穴を掘ることができないままに行動不能になり2年の任務を終えたことからも、その困難さが大きな技術的障壁となっている。
3番目は時間だ。計画ではセレスでの採掘作業が始まってから22年後にメガサテライトの建設が完了する予定だが、この見積もりではメガサテライトの利用可能な電力供給が毎年指数関数的に増加することは避けられないという。そしてそれに応える大量の電力が供給できない場合は建設計画は大幅に遅れるということだ。
こうした懸念材料はあるものの、人体にとって過酷な環境である火星地表での生活よりも、安全なシェルターともいえるメガサテライトへの移住のほうがひょっとすると現実味があるのかもしれない。計画が実行に移されれば一気に進みかねないこのメガサテライト計画の行方に注目が集まる。
参考:「Live Science」ほか
文=仲田しんじ
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提供元・TOCANA
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