ガリやショウガ、タレは使い回し?
過去には、高級料理店が期限や産地を偽装して販売し摘発されたことがあった。偽装事件で店が潰れることはなかったが、その後に料理の使い回し、つまり食べ残しの料理を再度提供していたことが発覚し営業停止に追い込まれるケースが発生した。高級料理店で、客が残したものを厨房で手直しして別の客に提供していたのだ。健康被害は起きなかったが、店は顧客からそっぽを向かれた。
使い回しが心配な食材としてパセリがあげられる。料理の添えものとして使われるが、食べ残されることも多い食材だ。「洗ってから使っているから問題ない」と言われても、使い回されていると知らされれば、食べる気はしない人もいるだろう。
飲食店のテーブルに置かれているガリやショウガ、タレなどは、いったん厨房に下げられていないだけで、客の食べ残しともいえる。「トングが備えてあるから心配ない」と言われても、本当にすべての客がトングを使っているのかはわからない。意図的であろうがなかろうが、飲食店でもっとも異物混入が容易に起きる可能性があるのが、座席に置かれたままの食材だ。今まで行政は目をつぶっていたにすぎない。
これらは加工食品だ。容器包装された加工食品を販売する場合は、消費期限・賞味期限を表示することが義務付けられており、その期限までは製造者である事業者が保証していることになる。開封後は消費者側の責任となる。もちろん開封後に食べて食中毒が発生しても、事業者側の責任が一切ないとは限らない。
飲食店に置かれたガリなどは、開封された加工食品である。開封したのは事業者である。しかし、いつ開封したのか、いつ継ぎ足しているのか、あるいは容器の食材がすべてなくなってから新しい食材を入れているのか、容器やトングはいつ殺菌・消毒されているのかといったことは客にはわからない。ほとんどが信頼関係と性善説に基づいている。
筆者はかつて食品衛生を担当している行政の職員に、飲食店のガリなどについて「なんらかの規制をしなくても大丈夫ですか?」と聞くと、「そこまでは……」という返事が返ってきた。今回の迷惑行為で初めて問題になったわけではない。開封された食材を無防備のままテーブルに置くことが許されているのは、今まで重大な問題が起きておらず、さらに事業者側の負担を考慮してのことだ。顧客が開封された加工食品を置くことを望んでいるかどうかは関係ない。あくまで食の安全確保が最優先される。
餃子の王将は保健所に相談したというが、相談されれば保健所は「衛生面を考えれば、開封されたタレをテーブルに置くことはお勧めしない」と言うだろう。一連の迷惑行為でもっとも問題なのは、毒物や異物を容易に混入させる手口が広く知られてしまったことだ。消費者も事業者も行政も、迷惑行為を行った人物を批判していればよいということではない。
「餃子の王将は異物(虫)混入であり迷惑行為とは違う」「ガリやショウガは食べ残しではない」といった考え方もあるかもしれないが、外食産業に一番求められているのは食の安全確保である。しかし、食の安全を追求するとキリがない。そこで、外食産業側に委ねられていることが非常に多い。そこに食品ロスの問題も関係してくる。
健康被害を未然に防ぐのは国の役割だ。一連の迷惑行為を受けて、国は食の安全を確保するために法律を厳しくしなければならない。しかし、そうなると事業者の負担も増え、結果的に価格が高くなることが想定できる。規模が小さい事業者のなかには商売をやめなければならない者も出るかもしれない。事業者が率先して食の安全を確保する仕組みをつくれば、法律で規制しなくても済むかもしれない。大手の事業者になればなるほど、健康被害に直結する事故・事件が発生した場合、被害者の数は多くなる。テーブル上に開封された食品を置く時代ではなくなってきたのではないか。
(文=Business Journal編集部、協力=垣田達哉/消費者問題研究所代表)
提供元・Business Journal
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