事業を売却して得られる金額は、その事業を継続したときに得られる未来の収益の現在価値なのだから、売却代金の再投資とは、古いものから得られる収益を新しいものに投資することであって、古い事業を継続しながら、その収益を新しい事業に投資することとは、集中投資による時間の短縮と、退路を断つことによる経営規律とにおいて、決定的に異なる。

この違いは非常に重要で、退路を断つことは新規創造を速める方向への誘因として働くことに意味があるのだから、要は、時間に帰着するわけだが、時間の速さこそが変革の決定的成功要因であることについては、論を待たないわけである。

つまり、古いものの収益力に依存し、その衰退速度に合わせて新しいものに投資していたのでは、新しいものの創造はできないのみならず、むしろ逆に、古いものの衰退を遅らせ、新しいものの創造を自ら阻む方向にすら、誘因が働きかねないのである。そして、まさに、ここに日本企業のおかれた深刻な状況があるわけだ。

森本 紀行 HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 HC公式ウェブサイト:fromHC twitter:nmorimoto_HC facebook:森本 紀行

 

 

 

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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