世界銀行によると、2022年時点でインドネシアの自営業率は50%を超えている(日本は10%未満)。
出典:THE WORLD BANK

リアル店舗でのビジネスのみならずECも盛んな同国は、同じく2022年にASEAN全体のEC売上の半分以上を占めた。インドネシアの人口がASEANの約40%でGDPは36%程度であることを考えると特筆に値する数字だろう。

オフライン・オンライン問わず、インドネシアにおけるビジネスの管理・運営を徹底的に効率化するアプリがiSellerだ。基本的なPOS機能を備え、在庫や売上などをリアルタイムで確認できる。

Image Credits:iSeller

そのうえ、リアル店舗ではユーザー自身が注文から支払いまで行えるシステムを手軽に構築でき、ECの効率化にも対応。さらにロイヤルティプログラムの作成や従業員の歩合給の設定など、気の利いた機能が「これでもか」とばかりに詰め込まれている。

利用料は最安のプランが月30万ルピアで、2024年3月現在のレートで3000円弱。ジャカルタの2024年の最低賃金は月500万ルピア程度’5万円弱)なので、割合で言えば20万円の給料に対して1万2000円ぐらいの感覚だ。そこまで安いわけではないが、決して高くない。

Forbes誌「アジア注目の100社」に選出

iSellerを運営するのはiSeller Commerce社だ。共同創業者兼CEOのJimmy Petrus氏は2002年にソフトウェア会社(Intersoft Solutions社)を立ち上げ、大手テクノロジー企業へと成長させた人物。Microsoft、Intel、 PhilipsやBoeingなど35ヵ国数千社のグローバル企業にサービスを提供した実績を誇る。

そして2016年にIntersoft Solutions社からiSeller Commerce社をスピンオフさせた。iSeller Commerce社は2023年に、Forbes誌の「アジア注目の100社」にも選出されている。

Jimmy氏は完璧主義者で、細部へのこだわりが桁違いに強いという。その気質が、iSellerの数々の機能の開発に大きく寄与しているのは想像に難くない。InstagramなどのSNS公式アカウントでは自社サービスを「デジタルレジ」と表現しているが、間違いなくそれを遥かに超える存在だ。

セルフ注文から支払いまでのシステムをアプリで構築

リアル店舗でのiSeller導入例を見てみると、店舗飲食店では顧客がテーブルのQRコードをスマートフォンで読みとり、メニューから注文し、キャッシュレスであれば支払いまで自分で行うことができる。大手フードデリバリーとの連携も可能で、注文が入ればiSellerのアプリに通知が入る。注文の処理や配達員の手配まで、アプリで対応可能だ。

Image Credits:iSeller

また、美容院でも、顧客自身がタブレット操作でカットやカラーなどのメニューを選択し、支払いまで済ませられる。このような受注・支払いのシステムがアプリ上で簡単に構築できるのだ。特に小規模な事業者で、システム開発を自力で行う余裕がない場合にはありがたい存在だろう。

同社の公式YouTubeを見る限り、店員が顧客に付き添って注文などの操作を手伝う場合もあるようだが、物理的には顧客の操作だけですべてが完結する。ワンオペ店にとってはありがたいシステムで、選択の幅は間違いなく広がるだろう。

支払い方法も店側が選べる。とある店ではキャッシュレスに移行した結果、現金を扱う手間がなくなり、従業員による横領の心配もなくなったと喜ぶオーナーの姿があった。

iSellerを使えば、リアル店舗だけでなくEC運営も効率化できる。自前のオンラインショップをゼロから構築できるのはもちろん、ShopeeやTokopediaといった国内大手ECサイトとの連携も可能だ。これにより、複数の店の注文や売上を一括管理できる。販売チャネルを増やしつつ、運営・管理の効率化を図りたい事業者にとってはメリットが大きいだろう。