王家の“純血”は家族によって意図的に保たれていたのか――。最新のDNA検査によって古代エジプトを象徴する王、ツタンカーメンは近親婚によって生まれていたことが示唆されている。
■ツタンカーメンの両親は兄妹だった!?
現代科学によれば、近親交配は望ましくない遺伝子の発現リスクを高め、遺伝的多様性を減少させることがわかっているが、そうしたことが科学的にわかってきたのは近年になってからのことで、古代においては近親婚の危険性は経験則でしかわかっていなかったと思われる。
古代エジプトの王家でも“純血”を守るために近親相姦が繰り返されていた。
“少年王”としても知られる古代エジプトの最も有名なファラオ、ツタンカーメンには依然として多くの謎が残されているが、その母親についても最近まで議論の余地が残されていた。
母親と目されていたのはキヤ、ネフェルティティ、そして単に「若い方の淑女(The Younger Lady)」として知られる人物の3名である。
かつてはネフェルティティが最も有力なツタンカーメンの“母親候補”と考えられていたが、2010年に発表された研究「Ancestry and Pathology in King Tutankhamun’s Family」のDNA鑑定によって「若い方の淑女」のミイラはツタンカーメンの母親であり、ファラオのアメンホテプ3世と女王ティイの娘であることが確認された。
さらに驚くべきは、父のアクエンアテンと母の「若い方の淑女」は兄と妹の関係であることが判明したのである。つまりツタンカーメンはきょうだい婚によって生まれた子供だったのだ。
古代エジプトの王であるファラオは“神の子”であると考えられていたため、普通の人々と結婚することはできなかったという。
そこで王族内では近親婚が頻繁に繰り返され、純粋な血統を家族内に残していたと考えている。近親婚によって“純血”が保たれると信じていたのだ。