7日に配信された「ITmediaビジネスONLiNE」記事『学歴フィルターはあります」──関係者が次々に明かす、日本のヤバい採用現場』が話題を呼んでいる。企業が新卒採用で一定レベル以上の大学の学生を優先したり、逆に一定レベル以下の大学の学生を選考から除外する学歴フィルターの問題は、以前から議論を呼んできた。

「一般消費者向け商品・サービスを扱う有名大企業ともなれば、採用選考のエントリー数が数万単位となり、すべての学生のエントリーシートを細かくチェックするのは現実的に不可能。G-MARCH(学習院、明治、青山学院、立教、中央、法政)と関関同立(関西、関西学院、同志社、立命館)あたりで線を引いて、それより下の大学の学生を一律で足切りしている企業は少なくないのが現実」(大手メーカーの人事担当者)

「外資系や経営コンサルティング会社では、とりあえず東京大学と京都大学、東京工業大学、地方の国立の旧帝大、早稲田と慶應義塾の学生だけをターゲットに選考を進める企業も多い。偏差値的には中位クラスでも、入試で5科目の受験が必要な地方の国公立大学も『堅実でバランスが良くて賢い』という理由で大企業も採用に積極的。偏差値上位の大学の学生は、受験勉強を通じて一定レベルの目標達成能力と学習能力があるという理由や、大学で一定レベルの学生たちと混じって切磋琢磨してきたという理由で企業から好まれる側面があることは否定できない」(外資系企業の人事担当者)

当サイトは2022年7月30日付記事『「G-MARCH以下だと大企業就職は困難」は本当?見えない学歴フィルターの存在』で学歴フィルターの実態について報じていたが、今回、改めて再掲載する。

――以下、再掲載――

近年の就活市場において、「大企業に就職できる学生は、ある偏差値帯の大学群を境に限られてきている」という指摘も出ている。そのひとつの基準がG-MARCH(学習院、明治、青山学院、立教、中央、法政)だ。G-MARCHの偏差値帯は、日東駒専(日大、東洋、駒澤、専修)よりも上、早慶上理(早稲田、慶應、上智、東京理科大)よりも下とされており、このラインが大企業の人事の選考基準、いわゆる学歴フィルターと化しているというのだ。

たとえば、5月29日付の「現代ビジネス」記事では、一橋大学名誉教授・野口悠紀雄氏がそういった実情を裏付ける論説を語っている。野口氏によると、日本の年間の大卒就職者の合計は約50万人で、そのうち従業員1000人以上の大企業へ就職できるのが年間約7万人なのだが、これはG-MARCHや東大、京大、一橋、東工大、早慶上理、関関同立(関西、関西学院、同志社、立命館)の合計卒業生数である約10万人よりも少ないとのこと。つまり、結果として大企業への就職は上記大学の卒業生だけで占められるというのである。

このように、G-MARCH以上の学生しか大企業に就職できないという現実は存在するのか。今回は大学ジャーナリストの石渡嶺司氏に話を聞いた。

明確に学歴フィルターはなくとも、結果論として存在?

まず、G-MARCHが大企業選考の基準になっているというのは事実なのか。

「あからさまな学歴フィルターを公言する企業はありませんが、大企業へ就職する学生の数の多さを見ていると、結果的には存在しているかと思います。

そう考えられる要因は主に2つありまして、一つは適性検査の存在です。適性検査には性格検査と能力検査がありますが、そのうち能力検査は数学や国語などの能力を測る試験であり、大学のレベルによって点数が大きく変化します。その際に企業側の及第点の点数を獲得できるのが、G-MARCH以上の学生であることが多く、逆にそれ未満の偏差値帯の大学生は低い点数をとる傾向にあるんです。

2つめは“二度手間フィルター”。近年は就活解禁の時期まで、企業主催のセミナーやインターンシップを自由に行えなくなりつつあり、企業が就活サイト上で先行して新卒採用の準備を行えなくなっています。そのため、企業は学生がリクナビやマイナビなどの就活サイトを通じてエントリーした際に、企業のマイページやSNSに登録するように促す。これを私は二度手間フィルターと呼んでいます。

多くの学生にとっては面倒でやらないことでしょうが、G-MARCH以上の学生は就活に対する情報感度が高く、とりあえず登録しておく割合が高いです。そうなると、企業主催のセミナーや説明会の情報を入手しやすく、登録していない学生と差が出てしまうのです。この2つの理由で、結果論としてG-MARCH以上の学生が大企業の選考で残りやすいのだと考えられます」(石渡氏)

さらに「G-MARCH以上の学生が重宝されやすいのは間違いではない」と石渡氏は指摘する。

「G-MARCH以上の学生に特別こだわりがあるわけではないかと思いますが、G-MARCH以上だと社内の賛同は得られやすいでしょう。選考時、G-MARCHないし日東駒専未満の偏差値の大学生は『採用しないのに無駄な時間を使っている』と他部署から批判される可能性もあり、基本的に人事部は採用に前向きではありません。

これは入社してからも一緒で、仮に入社した人間が戦力としては微妙でもG-MARCH以上の学歴であれば『優秀だと思ったけど仕方なかったね』と“G-MARCH卒”という肩書を免罪符に責任を免れることができます。ところが、それがG-MARCH未満の学生であった場合、『だからやめとけと言ったのに……』と苦言を呈されてしまう恐れがあるわけです」(同)

G-MARCH以上か、未満かだけでこれほど印象が変わってしまうのなら、学歴に対する人々の選民意識というのは、ある意味深刻なのかもしれない。