W杯そのものを遺産に
前述ではW杯が社会に残す遺産について着目したが、大会と競技自体を遺産とする取り組みがFIFAの「レガシープログラム」だ。
FIFAは2023年の女子W杯オーストラリア&ニュージーランド大会で初めて試みたレガシープログラムの目的を「大会を開催したことによる世の中への影響力を長期的に把握すること」としている。
つまりW杯閉幕後も、そこで繰り広げられた素晴らしいゲームを遺産として永続的に世界へ広めようというものだ。参加しているのはホスト国だったオーストラリアとニュージーランド、アジアサッカー連盟(AFC)、オセアニアサッカー連盟(OFC)とFIFA。ホストの両国では同プログラムについて更に踏み込み、オーストラリアは『Football Australia Legacy 23』、ニュージランドは『Aotearoa United Legacy Starts Now』という独自の戦略で取り組んでいる。それぞれ特設サイトにて一般公開しているので、どんな活動をしているのか誰でもチェック可能だ。
この取り組みで注目すべきは、2023年から2028年までという5年もの長い調査期間である。開催前後は非常に盛り上がるメガイベントも、一般的には時間の経過とともに世間の興味や関心が減少してしまう。しかし5年もの歳月をかけた継続的なプログラムによって、人々の意識がW杯やサッカーから離れるのを引き留める効果が期待されている。
世界が注目するメガイベントの功績
1930年にウルグアイで第1回大会を開催したW杯は、スポーツビジネスを牽引しながら世界的なメガイベントに成長した。開催地となるホスト国の決定から開幕までのプロセスにも注目が集まるなど、社会的な影響力は想像を絶するほど大きい。W杯がホスト国にもたらす波及効果はついに「遺産」と呼ばれるほどの価値となり、さらに今後はFIFAのレガシープロジェクトにより大会自体も遺産として後世へ引き継がれていくだろう。