生成AI活用のライフサイクル全体を保護
Protectoは、生成AIのトレーニング、RAGやプロンプトを含む生成AIのライフサイクル全体でデータを保護する〈中間層〉をソリューションとして提供する。
「検索拡張生成」、「取得拡張生成」などと訳されるRAG (Retrieval-Augmented Generation)とは、LLMによるテキスト生成に外部情報の検索を組み合わせて回答精度を高める技術。生成AIが巧妙に嘘をつく・不正確な情報を生成するハルシネーション問題を解決するものだ。Protecto社のサービスのひとつである「Secure RAG (SecRAG)」は、取得プロセスにロールベースのアクセスコントロール(RBAC)メカニズムを直接組み込むことで、回答の生成に用いられたすべての情報が厳密にチェックされる。
上図が示すのは、企業の内部データを活用したチャットボットにProtectoのソリューションを適用したユースケースだ。元のデータ形式と意味を保持しながら、個人の機密データをマスキングする。これによって生成AIが文脈を理解し、正確な出力を生成できるのだ。共同設立者2人はデータプライバシーのエキスパート
Protectoは、2021年にCEOのAmar Kanagarj氏とCTOのBaskaran Alagarsamy氏によって設立されたスタートアップだ。シリコンバレーに拠点を置く同社は、インドのバンガロールに先進的な開発センターを持っている。
CEOのKanagarj氏はSun Microsystemsの開発者としてキャリアをスタートさせ、のちにMicrosoft Search & AI部門でプロダクトマネジメントを率いた人物。起業は今回が2度目となり、1社目のFilecloud共同設立者としてデータプライバシーやガバナンス、コンプライアンスに関する貴重な洞察を得たという。CMOとしてFilecloudの年間経常収益を700万ドルにまでスケールアップした。CTOのAlagarsamy氏は、データエンジニアリングのエキスパートとしてAppleに18年勤務。プライバシー エンジニアリングやペタバイト規模のデータ問題について取り組んだ。Protectoに出資を行ったSpeciale Invest社の記事によると、2018年にはGPDR(EU一般データ保護規則)要件に対応するためAppleのプライバシーソリューションを開発した実績を有している。
2人はその知見を活かし、生成AI活用におけるセキュリティとプライバシーの問題についてウェビナーを行うなど、精力的に活動している。AI5月下旬にも非営利団体Dallas AIのためにRAG Deploymentについてワークショップを開催している。
出資に参加したSpeciale InvestのDhanush Ram氏が期待を寄せるとおり、今後も生成AIの可能性を最大限に引き出しつつ、安全なデジタルエコシステム構築に貢献してくれそうだ。
引用元:Protecto
文・五条むい