【最新モデル試乗】BEVのワールドリーダー、より先進的に使いやすく熟成したテスラ・モデル3の実力
(画像=テスラ・モデル3ロングレンジAWD/価格:651万9000円。ロングレンジAWDの航続距離は従来比17kmアップの706km。システム出力/トルクは331kW/559Nmとパワフル。0→100km/h加速は4.4秒でクリア。最新モデルはヘッドライトが薄くシャープな形状になったのが識別点、『CAR and DRIVER』より引用)

話題豊富なテスラ、その主力の1台が大幅改良

テスラは突然の値下げや一部モデルの右ハンドル車の生産中止など、なにかにつけて話題に上がる。だがBEV界の王者であることは歴然とした事実だ。クルマ自体の完成度と進化ぶりには触れるたびに感心させられてきた。最近、日本でも納車がスタートしたモデル3の最新版も、やはり驚きがいくつもあった。

試乗車はデュアルモーターAWDのロングレンジ。WLTCモード一充電当たり航続距離は706kmに向上。日本で発売されているBEVの中で最長の航続距離を実現した。車両価格は651万9000 円。モデル3はこの他に、RWDで同573kmの標準モデルを561万3000円でラインアップしている。

【最新モデル試乗】BEVのワールドリーダー、より先進的に使いやすく熟成したテスラ・モデル3の実力
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【最新モデル試乗】BEVのワールドリーダー、より先進的に使いやすく熟成したテスラ・モデル3の実力
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

デザインは小改良。ヘッドライトが薄くシャープな形状になったほか、テールランプはコの字型に変更された。リアのロゴがTESLAになったのもイマドキだ。ボディサイズは全長が25mm伸び、4720mmになった。写真のウルトラレッドという新色は光や角度によって色味が変化し、従来の赤系よりも高級感があって好印象だった。

ピラーにカードキーをタップするとロックが解除、室内に乗り込む。インテリアはかなりの変化があった。詳細はおいおい説明していくが、ダッシュ上面はリサイクル素材のファブリックに変更。ドア内張りもリファインされ、雰囲気はずいぶん変わっている。

印象的だったのは、ついにステアリング左右のレバーがなくなったこと。これまでも斬新なアイデア披露してきたテスラだが、新しいモデル3にはウインカーもワイパーもシフトセレクターもない。さすがにアクセルとブレーキはフロアにあるが、スッキリしすぎで驚いた。

【最新モデル試乗】BEVのワールドリーダー、より先進的に使いやすく熟成したテスラ・モデル3の実力
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【最新モデル試乗】BEVのワールドリーダー、より先進的に使いやすく熟成したテスラ・モデル3の実力
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

操作系の刷新は、あらかじめ聞いていたが、いざ走らせようとして「ん!?」となった。発進するには、センターの大画面ディスプレイの右端の表示を操作する。上にスライドさせるとDに、下にスライドさせるとRになり、上にPがある。最初は少々戸惑ったものの、乗っているうちに誤操作の可能性が小さくていいように思えてきた。

ウインカーはステアリングホイールに向かって左側のスイッチに変更された。フェラーリなどがすでに採用している方法に近い。こちらも慣れが必要で、とくにステアリングを回した状態で操作するのはなかなか難しい。実際その問題を指摘する声はあるようだ。

実は右ハンドルの輸入車で、左側にウインカーがあるのは間違いの元と個人的には思っていた。ステアリング位置の左右を問わないという意味では、テスラの新方式はベターなように思えた。
ただし、左右のウインカーのスイッチが上下に並んでいるのだが、シーソー式のほうがわかりやすいだろう。欲をいえばステアリングを回しても固定される仕組みになるよう願いたい。

圧倒的なパフォーマンスを実感。最新版は静粛性と快適性も大幅レベルアップ

モデル3に乗っていつも感心するのは優れたパフォーマンスである。まずはなにより、この価格帯では他にない圧倒的な加速力が印象的だ。さすがは0→100km/h加速が4.4秒というだけある。

【最新モデル試乗】BEVのワールドリーダー、より先進的に使いやすく熟成したテスラ・モデル3の実力
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【最新モデル試乗】BEVのワールドリーダー、より先進的に使いやすく熟成したテスラ・モデル3の実力
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

最新版は、走りが上質で快適になった印象を受けた。とくに静粛性が段違いだ。従来はアコースティックガラスの使用部位が前席回りに限られていた。新型はすべてのガラスに採用されたのが効いたようだ。一段と外界と隔てられた感覚になっている。

乗り心地もよくなった。タイヤの変更も効いていそうだが、荒れた路面でもその影響を受けにくく、振動が減ってしなやかでなめらかな走り味になっている。車両重量はそれなりに重いが、操縦感覚がいたって身軽に仕上がっているのもいい。

相変わらずの電脳ぶりにもあらためて感心した。テスラがいち早く導入した、自車周辺にいる車両や人をわかりやすく表示してくれる機能はもちろん、ウインカーやシフトを操作すると、それに合わせて確認すべき部分の画像が適宜ディスプレイに表示されるのは便利だ。オートパイロットについては、あまり長い距離は試せなかったが、先進的な機能と優れた性能の一端を味わうことができた。

【最新モデル試乗】BEVのワールドリーダー、より先進的に使いやすく熟成したテスラ・モデル3の実力
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【最新モデル試乗】BEVのワールドリーダー、より先進的に使いやすく熟成したテスラ・モデル3の実力
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

装備も充実した。中央のセンターコンソール背面にタッチ式ディスプレイが装備されたのも後席乗員に歓迎されるに違いない。インターネットで配信される動画などを走行中でも再生できる。画面サイズは8インチと小さいが、音響特性が後席向けに最適化されている。助手席よりも後席を希望する人が増えそうだ。

夜間に乗ると、乗員を囲むように柔らかな光を放つアンビエントライトが心地いい。ヴィーガンレザーのシートはフロントに待望のベンチレーション機能が付いたのも夏場のドライブでは重宝するはず。見た目のリフレッシュだけでなく、ユーザーにとってありがたいところにいろいろ手が加えられたことを歓迎する。

先進的な機能の数々と画期的で革新的なアイデアをいちはやく取り入れるテスラの姿勢に共感するユーザーは大勢いる。人気の秘密は、その積極性とともに、BEVとしての基本性能が優れているからだと実感した。テスラ成功には、それだけの裏付けが存在する。