スペースジェット開発で得た知見と財産、北米で進む三菱のMRO事業

 MSJの型式証明取得作業は3900時間の試験飛行を含め8合目まで進行したものの、開発費がかかりすぎ無念の撤退となった。逆にいえば、型式証明取得のノウハウを8割方獲得したことは大きな財産といえる。一方で三菱重工はスペースジェットの整備・保守を北米で行う目的でCRJの型式証明を含む知的財産と施設設備を購入したのだが、これが今や大きな財産となっている。三菱重工の100%子会社であるMHIRJアビエーショングループ(MHIRJ、本社:カナダケベック州ミラベル)は米国に3カ所の整備基地を持ち、MRO(整備・保守・オーバーホール)事業者として北米の地域航空会社のリージョナルジェットCRJの運航を支えている。さらに、このMRO事業に資本を投下しリージョナルジェットの整備だけではなく対象を小型の狭胴機(単通路機)A220にまで広げようとしている。このMRO事業では米国連邦航空局(FAA)、多くの航空会社、航空機・部品メーカーとの折衝が必要であり、三菱重工は不足していた航空業界の多くのノウハウと知見を学ぶことができる。

 不幸にしてMSJの開発は失敗に終わったが、その教訓を糧にすると共に型式証明取得のノウハウ、三菱重工の100%子会社MHIRJが北米で展開するMRO事業から得られるノウハウと経験値が、次世代の航空機開発に活かされることを期待したい。

(文=橋本安男/航空宇宙評論家、元桜美林大学航空・マネジメント学群客員教授)

提供元・Business Journal

【関連記事】
初心者が投資を始めるなら、何がおすすめ?
地元住民も疑問…西八王子、本当に住みやすい街1位の謎 家賃も葛飾区と同程度
有名百貨店・デパートどこの株主優待がおすすめ?
現役東大生に聞いた「受験直前の過ごし方」…勉強法、体調管理、メンタル管理
積立NISAで月1万円を投資した場合の利益はいくらになる?