世界各国において、地球温暖化は深刻な問題だ。各地のニュースでも、日々気候変動や温室効果ガス削減目標などにまつわるトピックが報じられている。また実際に我々が異常気象を体験することも年々増えており、他人事ではないと感じる人も多いのではないだろうか。

昨年にアラブ首長国連邦(UAE)・ドバイで行われた「国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)」のなかで開催された「世界気候行動サミット」にて、岸田首相は多様な道筋のもとですべての国がネット・ゼロという共通の目標に向けて取り組むべきことを改めて訴えた。

そのUAEにおいて、最先端のAI技術をもって気候変動に対処しているのが2020年にアブダビで設立されたFortyGuardだ。米国フロリダにもオフィスを構えるスタートアップで、革新的なソリューションでヒートアイランド現象(都市の気温が周囲と比べて高くなること)軽減に取り組み、住民の快適性とエネルギー効率の向上を目指している。

温度管理システム「tOS」を開発

Image Credit:FortyGuard

FortyGuardは、もとは材料科学分野でスタートした企業であった。しかしその後、都市の温度管理におけるデータの重要性に着目し、データ駆動型のソリューションへと転換した。

同社はTemperature Operating System(tOS)という高度な温度管理システムを用いて都市の詳細な温度データを高解像度で収集・分析し、都市計画者や公衆衛生担当者、環境エンジニア、建築設計コンサルタント、保険、銀行、物流、エネルギー分野の関係者などに提供している(参考)。

Image Credit:FortyGuard

tOSとは、水平0.0001〜0.001度、垂直0.5〜10mの精度で温度データを収集し、都市の微細な気温変動をリアルタイムで監視・分析する、同社が開発した革新的なシステムだ。これによりユーザーは、エネルギー消費、経済への影響、および住民の快適性に関する洞察を簡単に得られ、効果的な意思決定ができるようになる。

大きな成長みせるClimate Tech市場

近年の環境分野における盛り上がりは火を見るよりも明らかであるが、こういった気候変動関連技術のビジネス規模は実際どうなのか。

米国の市場調査レポートプロバイダーであるFuture Market Insightsが2022年に報告したレポートでは、気候変動関連技術(Climate Tech)の市場規模は、2023年で約203.4億米ドル、2033年までに1,825.4億米ドルに達すると予測されている。

また、2023年~2033年にかけてのCAGRは24.5%と予想される。これらは、驚くことにグリーンテクノロジーおよびサステナビリティ市場の規模をも、大きさ・成長率ともに上回る(同市場は2023年の市場規模約198.9億米ドル、2033年までに1,501.2億米ドル、2023~2033年CAGRは22.4%との予想)数字だ。今後、気候テックのビジネスチャンスが急速に拡大していくのは言うまでもない。

気候変動関連技術(Climate Tech)…気候変動や地球温暖化の対策、温室効果ガスの削減などに焦点を当てた技術。気候テックとも呼ばれる。