デジタル・デトックス・コックピット
ここでは、デトックスという言葉が用いられて説明を受けたが、デジタル化、コネクテッド化、技術の高度化などにより、ありとあらゆることが車内でできるようになり、現在地としては情報が溢れている状況だ。そこを、本当に必要なものか?といった視点を盛り込んだ「デジタル・デトックス・コックピット」を体験した。
必要なものはわかりやすく、不要なものは隠すことが必要だと説明されたが、必要、不必要の判断はどこで行なうのか?質問をしてみると「遭遇するシーンで必要なものが決まることと、もうひとつは、個人差があり精神的なもの、空間から受ける感性みたいなものがあるので、その2点がポイントになります。そして個人差に関してはドライビング・シミュレーターを使って、日夜人間の構造研究を進めています」という回答を得た。
一方で、ドライバーアバターを作り、行動学習をすることでクラウドに情報を集約し、必要なシーンに合わせて対応するという方法も研究していることも聞けた。
このようにHMIコクピットは各社開発競争が激しく、また中国市場、北米、欧州、そして日本でもその要求内容が異なる複雑さも持っているため、コストを踏まえた製品開発がこのインテリア・イノベーションセンターで行なわれているわけだ。



職人技が求められる製造工程
後半は実際の製品を作る工場見学をした。最初に見学したのは塗装工程で、特徴は自己修復機能を持つ塗装でピアノブラックに塗装された部分に擦り傷がついた場合、自然と擦り傷が消えていく塗装。これは塗料が柔らかいことで、凹みが自然回復する性質を利用したものだ。
次にバルクヘッドと呼ぶフレーム製造工程で、ラジエターやヘッドライト、コンデンサー等をフロントに取り付ける際のフレーム。こちらはホンダへ納品しているという説明だった。

興味深いのはIICでもサンプル展示されていたが、スマートサーフェイスという部品で、パネルの裏側に電子部品を仕込み、タッチ操作をした際、スイッチからのフィードバックが得られるものだ。これはiPhoneにある「触覚タッチ」のことでハプティック・タッチという機能を持たせたパネルを製造していた。
驚いたのは、これだけ自動化が進む中でも、人の手により職人技が必要な部品があることだった。GT-Rのダッシュボードにレザーを貼る工程では、表皮がグレードにより3パターンあり、本革、アルカンターラ、合皮で、それぞれを職人が丁寧に貼る作業を見ることができた。
GT-Rのようなスペシャルな車両には、こうした職人技が盛り込まれているほうが高い付加価値があるというわけだ。
HMIの領域はADASの進化、そして完全無人自動運転車両などが今後出てくるわけで、そうした次世代モビリティにおいて、重要な役目を果たす領域ということだ。
提供・AUTO PROVE
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