幸福なフェードアウトであり種としての安楽死

 これまでは“自力”で感情を優先させてきた我々だが、今後はテクノロジーによって感情を変えたりコントロールできる技術が進化してくるという。

「Emode」と呼ばれるこの感情修正デバイスは、望む感情をすぐに引き起こしてくれる技術である。

 すでに我々は愉快に笑いたい時にお笑いコンテンツを消費したりしているように、スリルを味わいたい時や泣きたい時などそれぞれのニーズを充足するに相応しいコンテンツをストリーミングサービスなどで大量にストックしている状態にある。

 もちろんその中には違法なものもあるが、気分を変えられる飲食物や化学物質などもすでに豊富に用意されている。

 Emode技術は常に進化しており、今後ますます豊富になり効力が高まること予想されるのだ。

 先進国では人々が選択できる娯楽、ライフスタイル、キャリアの選択肢は増え続けており、それらはすべて出産と子育てに必要な時間と労力とに競合している。

 そしてゲーム、SNS、アダルトサイト、ストリーミングサービス、AIチャットボットなど、多くの異なるモードを組み合わせることで、子供を必要とせずに感情的に満足できるライフスタイルを実現できるのだ。つまり感情的な幸福と快楽の追求行為が、皮肉にも少子化に繋がっているともいえるのである。

人類は“快楽”の絶頂で絶滅する! 全ての知的生命体を絶滅に追いやる過剰な幸福
(画像=画像は「Pixabay」より,『TOCANA』より 引用)

 さらにその影響は人類を超えて広がる可能性があり、フェルミのパラドックス、つまり我々の惑星以外には知的生命体が存在しないことの説得力のある答えが得られる可能性があるのだ。

 知的生命体として進化を続け、多くの幸福が得られる段階になれば自然に個体数は減少を続け、最終的には種として絶滅する運命から逃れられないのかもしれない。つまり幸福なフェードアウトであり、種としての安楽死である。

 このように知的種族とは実にはかない運命にあり、そう考えれば2つの異なる惑星の文明がお互いの“生前”期間中に出会って交流することなどまさに奇跡であり、ほぼ完全にあり得ないことなのかもしれない。

 植物や微生物とは異なり、知的生命体の誕生が進化の最終形態であり、“終わりの始まり”として考えてみるのも確かに興味深い。人類の宇宙開発が無駄な努力であったのかどうか、早ければ40年後には答えが出てくることになりそうだが、その時我々は幸せと快楽の絶頂期にあるのだろうか。

参考:「Big Think」ほか

文=仲田しんじ

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提供元・TOCANA

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