【最新モデル試乗】優れた走りとスペース性。新世代Kカーの「ど真ん中」、新型スズキ・スペーシアの優位ポイントを探る
(画像=スズキ・スペーシア・カスタム・ハイブリッドXSターボ/価格:7CVT 207万3500円(4WDは11万9900円高)。カスタムはクロームラインで存在感を主張。XSは165/55R15タイヤ&切削光輝アルミ標準。足回りはしっかりとした印象、『CAR and DRIVER』より引用)

新型はワクワクを満載! ボクシーフォルムが大きく見える

限られたボディサイズと、エンジン排気量の中に、目一杯の工夫を盛り込んだコンパクトカー、それが軽自動車(Kカー)である。世界中を見渡しても、Kカーほど、ユーザーフレンドリーで高機能なクルマはない。まさに日本の宝物だ。

そのKカーの最新モデルが、スズキのスーパーハイトワゴン、スペーシアである。スペーシアは、日本で最も売れているホンダN-BOXのライバル。それだけにデザイン、スペース性、ユーティリティ、走りのどの点をとっても、スズキ車の中で、頭ひとつ抜き出た完成度を誇る。

3代目となる新型のコンセプトは「ワクワク満載! 自由に使える安心・快適スペーシア」。いまや新車販売の約40%を占めるKカーの「真ん中」モデルとして徹底的に使う楽しさにこだわった。ラインアップはスポーティ志向のカスタムと標準モデルの2シリーズ。試乗車はカスタムがXSターボ、標準がX、ともに駆動方式はFFだ。

【最新モデル試乗】優れた走りとスペース性。新世代Kカーの「ど真ん中」、新型スズキ・スペーシアの優位ポイントを探る
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【最新モデル試乗】優れた走りとスペース性。新世代Kカーの「ど真ん中」、新型スズキ・スペーシアの優位ポイントを探る
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

新型のスタイリングは、大容量コンテナをモチーフにしたボクシーフォルム。ボディサイドにくっきりと刻んだビード形状が個性を主張する。カスタムはワイド感を強調する薄型ライトと大型グリルで、ちょっぴり「ワル」なイメージを演出。サイズは3395×1475×1785mmとKカー規格ながら、堂々とした印象にまとめている。タイヤが四隅にしっかりと踏ん張った安定感と骨太なイメージが魅力だ。

室内はボルドーとブラックでコーディネート。カタログに「まるでホテルのラウンジのような室内空間」と記載するように、確かにKカーとは思えないほどの風格を感じる。しっとりとしたタッチの本革巻きステアリング、合成レザーとファブリックのコンビシートの質感は高く、ヘッドアップディスプレイや全方位モニター付き9㌅ナビ(op19万5000円)など装備は充実。空間そのものも実に広い。まさにKカーの進化を実感した。

【最新モデル試乗】優れた走りとスペース性。新世代Kカーの「ど真ん中」、新型スズキ・スペーシアの優位ポイントを探る
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【最新モデル試乗】優れた走りとスペース性。新世代Kカーの「ど真ん中」、新型スズキ・スペーシアの優位ポイントを探る
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

リアシートにはレッグサポート/オットマン/荷物ストッパーの3モードに展開するマルチユースフラップを新装備。後席のゲストをより快適にもてなす。個人的には荷物ストッパーモードが便利だと感じた。ちょっぴりハードなドライビングにトライしても後席に置いた荷物が床に落ちることはなかった。足元スペースが広いスーパーハイトワゴンは、後席フロアに荷物を置くケースが多かったが、スペーシアなら置くスペースが選べる。

ターボは元気な走りが魅力。静粛性と乗り心地もハイレベル

パワートレーンはマイルドハイブリッド仕様。カスタムXSターボは、64ps/6000rpm、98Nm/3000rpmの直3DOHC12Vと3.1ps/50Nmのモーターの組み合わせ。トランスミッションは7速マニュアルモード付きCVTだ。走りは掛け値なく元気。右足の踏み込みに応じて機敏に加速し、爽快なドライブが楽しめる。きつい上り勾配でもパフォーマンスは十分。ワインディングではパドルシフトを駆使したスポーティランを満喫した。

【最新モデル試乗】優れた走りとスペース性。新世代Kカーの「ど真ん中」、新型スズキ・スペーシアの優位ポイントを探る
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

魅力はエンジンのパワー感、ステアリングフィールとその切れ味、サスペンションの反応、そしてブレーキの利きとペダルタッチなどの連携とバランスが巧みなこと。ドライビングのつながりは実にスムーズで、まさにイメージどおり。速さという点でもなかなかだが、それ以上に、「意のままに走る」点が心地いい。

静粛性も全般に高く、乗り心地も優秀。路面の段差をスムーズにいなすことに驚いた。一段と入念になった遮音対策と、高いボディ剛性は、確かに大きな効果を発揮している。このクルマなら、普通車からの乗り換えでも高い満足が味わえる。Kカーならではの取り回し性と、伸びやかで安定・静粛な乗り味を両立したカスタムXSターボは、腕に覚えのあるドライバーのファーストカーとして高い適性を備えている。

【最新モデル試乗】優れた走りとスペース性。新世代Kカーの「ど真ん中」、新型スズキ・スペーシアの優位ポイントを探る
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

標準車のXの完成度も高い。こちらもマイルドハイブリッド仕様で、49ps/6500rpm、58Nm/5000rpmの自然吸気エンジンと、2.6ps/40Nmのモーターの組み合わせ。室内は明るい配色で居心地がいい。パフォーマンスも実用十分だ。ただしターボ仕様のカスタムと比較すると、余裕という点で見劣りするのも確か。元気に走るには、右足を深く踏み込む必要が生じ、そうするとエンジン音とCVT独特のラバーフィールが気になる。Kカーとしてはよくできているが、普通車レベルには達していない。標準車にもターボが選べると、ダウンサイザー層には、うれしいだろう。

【最新モデル試乗】優れた走りとスペース性。新世代Kカーの「ど真ん中」、新型スズキ・スペーシアの優位ポイントを探る
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【最新モデル試乗】優れた走りとスペース性。新世代Kカーの「ど真ん中」、新型スズキ・スペーシアの優位ポイントを探る
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

新型は安全装備も新世代。メインセンサーをステレオカメラ式から、ミリ波レーダーと単眼カメラを組み合わせた新方式に変更した。前方の認識角度は従来の約2.6倍に拡大し、右左折時の歩行者や自転車、右折時の自動2輪車も検知する。全速度対応のアダプティブクルーズコントロールには、カーブや車線変更時の速度抑制と、停止時保持機能をプラス。操作性を高め、各種制御が一段とスムーズに進化した点は大きなメリットである。
新型スペーシアは、Kカーが新世代に移行したことを実感させる小さな大物といえる。