1. CO2濃度と安全性の問題

    【指摘3】 この映画では、「CO2濃度が高かったおかげで、より緑豊かな世界と高い生物多様性をもたらした。CO2レベルが上昇していることに感謝すべきである。CO2濃度が十分に低くなると、光合成が非効率的になり、植物が死滅してしまう」とある。過去のScience Feedbackのレビューによると、今日の植物に恩恵をもたらしているからといって、それが人間にも恩恵をもたらすとは限らない。恐竜や植物にとって最適なCO2濃度に長期間さらされることによる人間の健康への潜在的なリスク、社会への影響リスクは存在する。

    → 恐竜についてはわからないが、植物に対する最適なCO2濃度としては、植物工場の事例から、1,500ppm程度のCO2をガスで供給している。CO2の健康リスクについては、日本産業衛生学会やACGIHによって許容濃度が規定されており、 5,000ppmである。また、人体に対してCO2は毒性が無いので、通常の使用状態において、ほとんど影響はないとされる。ただし、高濃度になると酸素の欠乏による窒息を起こすのでガス漏れに注意し、室内換気は十分行うとしている。

    通常のオフィスについて言えば、厚生労働省が定める建築物環境衛生管理基準によってCO2濃度が規定されており、1,000ppm以下が適切だとされている。はたして、現在の430ppmが、どれほどの健康影響を与えるのだろうか?

    また、光合成が非効率になり作物の収率が低下することについて、植物が光合成を行うためには、CO2が大気から植物に物質移動してこなければならない(フィックの法則)。

    つまり、CO2の物質移動速度は、拡散係数と濃度差の積によって表現できる。CO2の大気中の濃度が低くなると、この濃度勾配が小さくなって、植物の細胞内への移動モル量が低下し、作物が成長しない、収率が悪くなるという結果につながる。映画の中では、180ppmがその閾値と説明していた。

  2. まとめ

    石油物理学者のAndy May氏によると、Science Feedbackの投稿はこの映画が誤解を招くと主張しているが、それは明らかに間違っている。Science Feedbackは、映画が検証しているのと同じデータや事実を見て、映画に出てくる著名な科学者とは異なる結論を導き出している。彼らは映画の専門家とは異なる意見を持っている。だからといって、映画に出てくる科学者が事実無根だということにはならない。

    結局のところ、フェイスブックの検閲は完全に常軌を逸しており、その「独立した超党派のファクトチェック」なるものの正体は、偏った意見にすぎない。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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