バンダイナムコホールディングス(HD)子会社の50代の男性社員(すでに懲戒解雇)が、ガールズバーでの飲食代やプレゼントなどの資金を確保するために、同社が所有する携帯電話を約500台、不正に売却して5400万円を着服した業務上横領の容疑で逮捕された。男性は同様の手段で計4億円を得ていた疑いがあるというが、中高年の男性がこうした業態の店舗に通うために借金を重ねてしまうケースは少なくないという。もし自身や家族、知人がそのような“ドツボ”にハマって借金を抱えてしまった場合、どのように対処すればよいのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

「鉄拳」「太鼓の達人」「テイルズ オブ アライズ」などのゲーム、「プリキュア」「それいけ! アンパンマン」「たまごっち」関連の玩具、カプセルトイ「ガシャポン」、「ガンプラ」などのプラモデルなど娯楽関連の商品を幅広く扱う大手メーカー、バンダイナムコHD。グループ連結従業員数は2万人以上、売上高は約1兆円、当期純利益は約1000億円(2024年3月期)を誇る総合エンターテインメント企業だ。

 そんな同グループの中核企業であるバンダイナムコエンターテインメントの元社員が14日、業務上横領容疑で逮捕された。男性は備品の調達・管理業務を担当しており、15年から22年までの間にスマートフォンなどのモバイル端末4400台以上を無断で業者に売却し、約4億円を不正に得ていた疑いがあるという。

「男性は業務用端末を含む備品の管理業務に就いていたということなので、自分で外部に売り払った端末を社内の管理データ上はどこかの部署で使用中ということにして登録するということができた。数十台程度であれば『所在がわからなくなった』『紛失した』というかたちで処理してバレなかったかもしれないが、さすがに数千台ともなれば社内で不審だとして気づかれる。基本的に企業というものは「社員は違法な行為はしない」という性善説で成り立っているので、一部の問題ある社員が不正をはたらくというケースは大企業であるほどゼロにはできない」(大手メーカー管理職)

40~50代の男性が陥る罠

 あくまで仮定の話として、もし2015年から22年までの7年間、前述のような形態の飲食店で4億円すべてを使っていたとすれば、毎日店に通ったとして1日あたり15~16万円程度を支出していた計算になる。

「高級クラブと比べるとリーズナブルなこうした店で毎日これだけの金額を使うというのは結構難しい。飲み放題付きで一人1時間5000円~1万円ほどの店が多く、一緒に行った複数人の知人や店員のドリンク代などの会計も負担して、数時間利用してやっとこれくらいの金額になる。

 店員もどれだけ客から指名を受けるかで報酬が変わってくるので、客にLINEや電話で積極的に営業をかけるわけだが、接客時に架空の苦労話をして同情を引いたり、恋愛感情を匂わせたりとあの手この手で自分の固定客にしようと努力する。なので遊び慣れていない男性客ほどカモになりやすく危険だ」(飲食店経営者)

 なぜバンダイナムコの元社員が店舗に足しげく通い、高額な支出を続けたのかは不明だが、40~50代の男性が同様の罠に陥ってしまうケースは少なくないという。

「若手の頃からずっと激務が続き、仕事上の会食以外では飲みに行くようなことは全くといっていいほどなかった人が、40代で課長になった途端に毎日のように女性がいる店に通うようになり、明らかに仕事のパフォーマンスが落ちていた。せっかく大企業の課長になれたのに、もったいないと感じた」(大手メーカー管理職)

「50代でもヒラだった社員が女性店員に入れあげてしまい借金までつくった。消費者金融会社から会社にまで返済催促の電話がかかってくるようになり、部長の温情で借金を返せる程度の退職金をもらって会社を辞めた。あと数年会社に残っていれば、それなりの額の退職金を得てセカンドライフを送れていただろうに」(IT企業管理職)

「破産事件及び個人再生事件記録調査」(日本弁護士連合会)によれば、破産に至った理由のうち「浪費・遊興費」は概ね10%ほどであり、この項目には買い物や飲食、旅行なども含まれており、クラブなどでの遊興が原因というケースは、目立って多いわけではないものの一定数あるというのが現状といえる。