インドネシアは農業が盛んな国だ。世界銀行によると、2022年時点で労働人口の29%が農業に従事しているという。世界平均の26%をよりわずかに上回る程度だが、それでも3分の1程度が農業に関わっている。
さらに、同国の農業省のデータによれば2022年にはインドネシアのGDP全体で農業部門が占める割合は10.3%を記録し、世界平均の4.3%に大きな差をつけている。しかも、この4.3%という数字は農業だけでなく、漁業と林業を足しての数字だ。
とはいえ、インドネシアで農家として食べていくのも楽ではない。同国では銀行融資を受ける要件を満たす現役農家は22%に留まるという。さらに、テクノロジー導入の遅れや農業従事者の高齢化(65%が60歳以上)なども重なり、都市部との経済格差が2倍に拡大している。
この問題を解決すべく設立されたのがCROWDEというスタートアップだ。同社は農家を支援するため、融資型のクラウドファンディングを運営する。
農家としての苦境が起業のきっかけに
CROWDEは2015年にYohanes Sugihtononugroho氏とMuhamad Risyad Ganisによって設立された(Muhamad氏は2018年に退社したようだが、今も株主としてCROWDEの公式サイトに名前が掲載されている)。同社は資金調達へのアクセスや市場分析などのサポートを通じて、インドネシアの農家にビジネスの機会を提供している。SDGsの目標である「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「働きがいも経済成長も」にも取り組んでいる。
CEOを務めるYohanes氏は、物心がついたときから農業に親しんでいた人物だ。自身でも農業を始めた際、農家が直面する問題に気づいたという。貧困や運転資金確保の難しさなどが、農家にとって大きな負担になっていたのだ。当初は農産物の買い取れば状況を変えられると思っていたが、数か月でその影響力は限定的だと気づいた。
そこで2015年、農家の運転資金が大きな課題になっていることに着目し、CROWDEを設立。クラウドファンディングの仕組みを利用して、農家が投資家から運転資金を募り、利益を分配するプラットフォームをつくりあげた。なお投資金額の5%をCROWDEが手数料として徴収する。
貸し手にも借り手にもメリットを提供
クラウドファンディングには個人でも法人でも参加が可能。月300万ルピア(約3万円)から受け付けており、最高で年31%のハイリターンが期待できるという。これだけ高い利率を掲げられると不安になるかもしれないが、CROWDEはインドネシア金融サービス庁の認可を受け、フィンテック業界団体であるAsosiasi Fintech Pendanaan Bersama Indonesiaにも登録されている、れっきとした会社だ。
国営のMandiri銀行や、西ジャワ州などが株主のbjb銀行もクラウドファンディングに参加していることから、信頼性の高さが伺える。Mandiri銀行はCROWDE公式サイトで「CROWDE とともに、私たちは農家がより良い生活を送れるよう支援します。これは、インドネシアを繁栄させるという当行の理念に沿ったものです。」と述べている。借り手側のメリットは、資金を確保できるだけではない。プロジェクト管理のサポートや農産物の販売・流通支援を受けられるほか、収穫物でのローン返済も可能だ。2019年には、農家の88.24%が、CROWDEは他の資金調達方法よりも農家に優しいと回答した。
2024年5月時点で、CROWDEは20,000以上の農家に融資を実行。設立からの融資総額も972兆ルピア(約11兆ドル)を記録している。