日本は世界的に見ても、気象観測システムが充実している国ともいえる。雨雲レーダーやアメダス(地域気象観測システム)だけでなく、日本独自の気象観測衛星も打ち上げている。農家は日々の天気予報を見れば数日後までの詳しい天候の変化を知ることができ、その情報を農場の管理に活用できる。

自国の気候に寄り添った人工衛星を開発でき、しかも自国のロケットで宇宙まで打ち上げられる国は世界では少数だろう。

Image Credits:Ricult

だが、そうした状況も近いうちに変化するかもしれない。アメリカに拠点を置く2016年設立のスタートアップRicultは、人工衛星とAIを駆使して新興国の農村に技術革命をもたらしている。

人工衛星とAIを駆使

前述でRicultを「アメリカに拠点を置くスタートアップ」と紹介したが、経営者はマサチューセッツ工科大学の学生だったタイ出身のAukrit Unahalekhaka氏とパキスタン出身のUsman Javaid氏だ。従って、それぞれの出身国とベトナムにてRicultを運用している。

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Ricultは、衛星画像や気象情報などをAIで分析し、農園の状態や収穫時期を予測・情報提供する。毎日の天候や異常気象に対する警戒、予想収穫量、それらのデータを基にした専門家のアドバイスもユーザー(現地の農家)に提供する。

それらのデータが表示されるのは、スマホアプリ上。Ricultのプラットフォームを取り入れた農家は、農園管理に関する最新の情報をいつでもスマホで確認できるのだ。もちろん、遠方にいたとしてもインターネット環境さえあれば自分の農園の現状を知ることができる。

すでに500万エーカーの農地を分析してきた実績を持つRicult。これまでサポートしてきた農家の数は60万近くにのぼる。

農家対象の金融事業も

Ricultは天気予報や農業衛星情報の提供だけでなく、農家に対する金融事業も行っている。

これは新興国の農業関連スタートアップに共通することだが、オンライン分析サービスを普及させるには金融事業の展開も考慮しなければならないという事情がある。

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全国各地に地方銀行や信用金庫、組合の支部がある日本とは違い、東南アジアや南アジアの国々の一次生産者は当初から「頼れる金融機関」を持たない場合が多い。融資がないために新しい農地を購入することも機材を揃えることもできず、貧困から抜け出せないままという例は珍しくない。逆に言えば、トラクターを購入する資金さえ工面できれば収穫量は飛躍的に増えるはずだ。

Ricultは、そうした農家に対して50万ドルの経済支援を行ってきた。