つなぎ予算以外にも、上院と下院の足並みはそろっていない。最も大きな問題となっているのは上院が超党派で可決したウクライナ支援だ。ジョンソン下院議長は「国境問題の解決が先だ」として頑なに審議にかけない姿勢を貫いている。

共和党下院議員が全員反対しているわけではないので、おそらく投票にさせ持ち込めば$950億のウクライナ・イスラエル等への対外支援法案を上院は可決するはずだが、投票スケジュールには未だ入っていない。 付託解除請願(discharge petition)として、ジョンソン下院議長を迂回して採決に持ち込む方法もあるが、採決に必要な下院議員218名の署名が集まる見込みは今のところない。

年度予算の進捗

11月のつなぎ予算を再度延長する際に、共和党下院は期限を2つに分割した。本当は1つ1つの予算法案を審議して可決させたいわけだが、妥協案としてに分割にした。歳出予算の約20%が3/1に期限切れを迎え、約80%が3/8に期限を迎える。

新たに予算が可決しない場合は、該当する行政機関が閉鎖となる。例えば、農務省関連の予算の期限が切れた場合は農務省関連行政機関が閉鎖となる。

肝心の年度予算の進捗協議は進んでいるが、両党の意見は未だ埋まらない※2。

1月上旬にシューマー上院院内総務とジョンソン下院議長は 2024年度の裁量的支出の上限は$1.59兆にすると合意して、そこからスムーズに進むと思いきや、各委員会に$1.59の年度予算が配分されることになるところで交渉難航している。共和党下院議員(主にフリーダムコーカス)の中には、この合意にさえ不満をもっている議員が一定数いるので、共和党内でもまとまりにくい。

今までは、1年近くつなぎ予算を続けて交渉することもあったが、今年は少し事情が異なる。

Fiscal responsibility Act of 2023により、4月30日までに2024年の裁量的支出が予算成立しなければ、2023年度予算から一律1%削減となり、5月1日から適応される。これは非国防費・国防費ともに影響を受けることになる。CBOが1月に発表した具体的な削減では非国防予算は5%~9%、国防予算は0%~1%の幅で一律に削減されると試算している※3。

現状のつなぎ予算が4月30日まで続いた場合は、民主党の歳出委員長マレー議員によると国防費265億〜365億ドル、非国防費については700億ドルの削減になると警告している。これを引き起こした場合は、数万人の雇用が失われ、 数百万人の低所得の女性や子供たちが給付金を失うことになると警告している※4。

民主党は上位下院ともに4月30日までつなぎ予算になることを猛反対しているし、ジョンソン下院議長も国防費の一律削減には懸念を示している。一方で、共和党下院議員のフリーダムコーカスは積極的にこの一律1%削減を推進しており、むしろこの法案を提出するよう迫っている※5。

仮に今回もつなぎ予算で乗り切った場合、4月30日をどう乗り越えるかが次の正念場になるだろう。

【参考資料】 ※1:Lawmakers fail to reach deal with partial shutdown looming ※2:Johnson eyes spending package to avert shutdown, warns GOP not to expect ‘home runs’ その他全般 ※3:Implementing the Statutory Limits on Discretionary Funding for Fiscal Year 2024 ※4:FACT SHEET: Senator Murray Details Devastating Harm of Speaker Johnson’s Full-Year CR Threat That Would Undercut America’s Economy and National Security ※5:Freedom Caucus pushes Speaker Johnson for full-year CR in absence of policy concessions

編集部より:この記事は長谷川麗香氏のブログ「指数を動かす米議会」2024年2月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「指数を動かす米議会」をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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