1. 政府個別消費支出の寄与

    現実個別消費に対する政府個別消費支出の割合を確認していきましょう。

    この割合が高いほど、政府としての消費に関する寄与が大きい事になり、福祉国家的な性格が強いと言えそうです。

    また、高齢化が進む国ほどこの割合が高まりやすい傾向もあるかもしれませんね。

    図4 現実個別消費に対する政府個別消費支出の割合OECD統計データより

    図4が主要先進国と韓国、スウェーデン、オランダの現実個別消費に対する政府個別消費支出の割合の推移をグラフ化したものです。

    各国で大変興味深い傾向が見て取れますね。

    なんといってもアメリカが10%未満で極端に低い水準が続いています。

    スウェーデンは1990年代から25%を超える高水準が継続していて、好対照ですね。さらに少しずつですが上昇傾向でもあります。

    オランダは2000年頃までは20%前後でフランス並みでしたが、その後急激に上昇して近年ではスウェーデンと同程度です。

    オランダはパートタイム雇用率が高かったり、企業が黒字主体化して純金融負債が減っていたりと先進国の中でも特徴的な国です。(参考記事:日本はパートタイムが多い?、参考記事:西欧諸国の資金過不足)

    イタリアは15%前後、カナダは17~20%で横ばいですが、その他の主要先進国はやや上昇傾向に見受けられます。

    イギリスがリーマンショック以降変調していそうですね。

    日本はやや上昇傾向が確認できますが、近年ではカナダやイギリスと同程度のようです。

    韓国は上昇傾向が強いですね。

    韓国は急激に少子高齢化の進む国でもあります。(参考記事:少子高齢化する先進国)

    フランスは1980年代から20%近くで徐々に上昇していて、主要先進国の中でもかなり高い水準となっています。

    主要先進国の中では、様々な指標でアメリカとフランスが対照的なのが興味深いですね。

    再分配後の貧困率や雇用保護指標などでも立ち位置が対照的です。(参考記事:貧困率の高い日本、参考記事:日本は解雇しにくい国?)

    図5 現実個別消費に対する政府個別消費支出の割合 1997年・2021年OECD統計データより

    図5が現実個別消費に対する政府個別消費支出の割合について、1997年(赤)と2021年(青)の国際比較です。

    やはり北欧諸国やオランダ、ルクセンブルクが高い水準です。

    ハンガリーとスロバキアを除いて、各国で割合が上昇している事も良くわかります。

    アメリカはコロンビア、トルコ、メキシコに次いで割合が小さく、まさに「小さな政府」を体現しているような立ち位置です。

    日本は高齢化が極端に進んでいる割には、OECDの平均値をわずかに上回るくらいで、先進国の中では中程度の立ち位置となります。

    ただし、1997年からの伸び率は比較的大きいですね。

  2. 政府個別消費支出の増大

    今回は、現実個別消費の内訳についての国際比較をご紹介しました。

    各国で現実個別消費が増える中、政府個別消費支出の割合も増加していて、政府による寄与が強まっている国が多いようです。

    日本も政府個別消費支出の割合が高まってはいますが、現在のところ20%程度で、先進国の中では中程度の割合に留まります。

    日本は最も高齢化の進んだ国ではありますが、この割合が適切なのかどうか議論もありそうです。

    例えば、日本の家計の可処分所得は先進国の中でも低く、相対的貧困率は高い水準です。再分配の観点からすると、政府の寄与は十分ではない可能性もあるのではないでしょうか。

    皆さんはどのように考えますか。

    編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2024年4月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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