輸送業者全体の利益管理への貢献
南アフリカのビジネスを語るうえで最も忘れてはいけないのは、1994年に廃止されたアパルトヘイト政策(人種隔離政策)の影響である。アパルトヘイト廃止後20年という歳月が流れた現在においても、やはりマーケットの主力はヨーロッパ資本の企業であり、当時白人と呼ばれた人々がつくり上げてきた市場の雰囲気はいまだに色濃く残っている。そして依然としてインフラ整備が整っていない地域や、教育・医療において公共の福祉が行き届いていない状況のなか「働き手」の確保や教育、「雇用の創出」という点などにおいて、まだまだ不十分である実情がある。
さらに、アフリカ内貿易はアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)があるにもかかわらず、輸送インフラが貧弱である点から、国境を越えて移動するには多大な時間とコストがかかるため、世界の貿易と比較して依然として低いままだ。
こうしたなかでTripploは、安全かつ効率的な方法で貨物の移動を実現することを目指した。その仕掛けのひとつが、プラットフォーム開発と情報提供である。輸送業者に対し、徹底的なリサーチに基づいた輸送ルートの最適化を提案するなどコスト削減の手法を惜しみなく提供したほか、あらゆる取引における請負業者との価格交渉を実現した。
さらに、こうした情報のすべてはプラットフォーム上で管理できるようにしているため、現場で働くドライバーはアプリケーションを通じ、自分の業務を最適化することができる。
また上述のスタンダード銀行との提携により、Tripploは同銀行の金融サービス製品に複数のAPIを統合したプラットフォームを構築した。これは、単なる銀行のアプリケーション開発ではなく、物流・流通におけるインスタントマネーの利用や輸送商品についての保険の拡充のほか、輸送業者全体の利益管理への貢献にもつながる取り組みだ。
南アフリカの輸送業界の風雲児
世界的なパンデミックによる不況を乗り越え、Tripploは革新性を実証し一躍南アフリカの輸送業界の風雲児となった。
Afrikan Heroesの報道によると、2023年の南アフリカの貨物および物流市場の推定規模は215億3,000万ドル、この数値は2029年までに305億6,000万ドルに成長すると予測されている。
Tripploの戦略的パートナーであり、180万米ドルの投資ラウンドを主導したFuturegrowth Asset Managementの投資責任者であるAmrish Narrandes氏は、今回の投資について「我が国の成長における物流の重要性を強調するだけでなく、革新的な経営の重要な役割も浮き彫りにするものである」 と語っている。
参考・引用元:Tripplo
(文・獏 弥生)