2023年10月、物流ソフトウェアプラットフォームを提供するTripploは、180万米ドルという多額の株式投資を確保することに成功し、南アフリカで大きな話題を呼んだ(参考)。
ヨハネスブルグに本拠を置く同社は運送業者、荷主、貨物ブローカーの業務を自動化するテック企業として発展を遂げた。E2Eのロジスティクス・プラットフォームで貨物所有者と運送業者をつなぎ、安全性と効率性を両立した貨物の移動を支援。アフリカ全土における輸送業者のコンプライアンスを整備し、収益性を向上させることを見据えてメーカーやロジスティクス企業との提携を模索している。
一方、コロナ禍における経済を取り巻く環境は決して恵まれたものではなく、当時Tripploも事業の縮小に見舞われた。そのさなかに同社は目覚ましい成長を遂げることとなった点が特筆すべきところだ。
CEOはMicrosoft SAの元ビジネス開発マネージャー
流通輸送業界で目まぐるしい発展を遂げたTripploではあるが、実はその前身はソフトウェア会社である。同社のCEOであるVictor Chaitezvi氏は、米国オクラホマ州立大学出身。南アフリカへ戻ったあとは複数の大学でビジネスや金融の修士を取得し、その後ヨハネスブルクの投資会社であるValue Capital Partnersで投資アナリストとして働き、Microsoft SA(South Africa)ではビジネス開発マネージャーとして腕を磨いた。こうした経験をいかし、Tripploの起業に至った。
Tripploの物流改革
Tripploが称賛を集めている理由は、システム開発への惜しみない投資、そして柔軟な開発の姿勢にある。そもそもアフリカは国土が非常に広く、外港を持たない内陸国が多いことから、輸入貿易港から各地への輸送は道路貨物物流を利用することが一般的である。すでに多数の業者が参入している業界において彼らのような新参者がビジネスを始めるということは、あまり歓迎されていなかった。
こうした背景において、Chaitezvi氏は「アフリカの道路貨物物流の新しいスタンダードを創造すること」をビジョンに掲げ、彼らはソフトウェア会社で培った知識を最大限に活用しシステム開発に取り組み、あらゆる分野の道路貨物サプライチェーンを合理化することに成功した。
2019年、南アフリカ・スタンダード銀行とテック系スタートアップの投資家FFAによる起業支援プログラムからTripploが誕生。
BusinessTechによれば、Tripploはほかの企業同様に、コロナ禍にビジネスの縮小や方向性の転換を余儀なくされたが、この時に得たスタンダート銀行の支援などによりビジネスを波に乗せることができたと伝えられている。
当時はパンデミックによって世界の多くの国で物流の急激な需要増が問題となっていた時期である。新たなシステムの構築は国家レベルでの改革が必要となり、彼らのビジネスは単なるスタートアップ企業の域を超え、国全体の存続にかかわるほど重要な「物流改革」となっていった。