運命は決まっていたようです。
スペインの高等科学研究員(CSIC)で行われた研究により、ヤツガシラと呼ばれる鳥では、自らの子供をエサとして、別の子供に共食いさせていることが示されました。
これまで虫や爬虫類などでは、子孫の一部を食糧庫として別の子孫(兄弟)に与えることが知られていましたが「親が子供の世話をする」種で同じ習性が発見されたのは今回がはじめてとなります。
研究内容の詳細は2月に『The American Naturalist』に掲載されました。
余分な卵は保険かそれとも食糧庫か?
多くの鳥たちは少し多めの卵を産みます。
3匹のヒナが理想的な種では4個の卵、4匹のヒナが理想ならば5個の卵というように、卵の数は想定するヒナの数に「プラス1」したものになります。
これまで、この「プラス1」された卵は孵化の失敗・病気・捕食などによるヒナ喪失の保険として機能すると考えられてきました。
しかし新たに行われた研究によって、ヤツガシラと呼ばれる鳥たちでは卵を「プラス1」する理由が普通とは違う可能性が示されました。
ヤツガシラはユーラシアとアフリカの両方に広く分布している雑食(肉食より)の渡り鳥であり、日本でも冬になると少数のヤツガシラが渡来することが知られています。
しかしヤツガシラにはもう1つ、高い兄弟食いの頻度が知られていました。
これまでの研究で、ワシやタカなど多くの鳥類で兄弟同士の殺し合いが発生していることが知られています。
兄弟が少なくなれば親からもらえるエサが増えるという利点があるからです。
もし飢餓状態であれば、殺した兄弟を食べることもあるでしょう。
しかしヤツガシラの兄弟食いは親との共謀によって行われる点で大きく異なります。
ヤツガシラのヒナたちのクチバシや爪は、肉を切り裂くようには作られていません。
そのためヤツガシラの兄弟食いは、孵化直後の小さなヒナを親鳥が掴み、年長の大きなヒナの口の中に放り込む形式をとっています。
そこで今回、CSICの研究者たちは、ヤツガシラの兄弟食いが、病気や事故によって死んだ兄弟をエサとして有効利用する偶然に頼ったものか、あるいは卵を産む時期を調節した計画性のあるものかを調べることにしました。