embedded worldは世界的な組み込みハードウェア、マイコンの祭典で、2003年からドイツ・ニュルンベルクを皮切りに、上海・テキサスなど各地で行われている。基本的にB2Bの展示会で、マイコンメーカーと製品メーカー、それらを使って製品を製造するソリューション企業などのための展示会だ。
Raspberry Pi、Arduinoも産業向け製品を展開
組み込み向けマイコンは、ドローンや電気自動車などの最終製品に組み込まれることもあれば、工場の自動化機械を構成する部品となることもある。かつてはメカ的な機構で検知や振り分けが行われていた工場での自動化機械に、カメラなどのセンサーやロボットアームなどのインテリジェントな機械が進出するようになって久しい。
DIYやプロトタイプの場面で多く使われていたRaspberry Piは、そうした工業自動化分野への進出が著しい。embedded world 2024でもブースを構え、CEOのエベン・アプトン氏が自ら取引先とやりとりしていた。Raspberry Piは工場の制御装置に使われるPLC(Programmable Logic Controller)関連や、今回のイベント中にSONYと連携して発表したAIカメラなどにおいて、パートナーを増やしている。 同じくDIYや教育向け分野での活用が多かったArduinoも、作業向けのArduino PROシリーズの一つとしてArduino PLC Starter Kitを発売(産業用機器メーカーのFinder社と協力)するほか、高性能なプロセッサを搭載したArduino Portentaシリーズを展開するなど、産業界へのアプローチを続けている。embedded worldでもArduino PROのイメージカラー(Arduinoのブルーと違い、黒とレモンイエロー)で固めたブースを設置し、CEOのファビオ・ビオランテ氏を中心にさまざまなパートナーとミーティングを行っていた。
中国勢の躍進
会場の各所に「China New Connection」という、中国のスタートアップや中小企業ブースが固まったコーナーが配置されていたが、そうしたコーナーを超えて中国勢の出展が目立っていた印象だ。Hall 5は台湾コーナーとしてMediaTekといった台湾企業が集められていたが、そのHall 5も中国大陸からの出展企業がより目立っているほどだ。
深圳に本社を置く小ロットPCB製造サービスJLCPCBもembedded worldに初出展。同社は世界各地からオンライン・安価でPCB製造や3Dプリントなどのサービスを発注できることで、欧州でも多くのユーザを獲得している。 GOWINは4年連続でブースを展示。同社のFPGAチップは中国含むアジアでの電気自動車市場で大きなシェアを持ち、車載向けを含めたシリーズを増やしている。FPGAが多く使われる分野である高速インターフェースやディスプレイ制御などのデモ含め、新型のArora Vシリーズを使用したデモを数多く展示していた。