アル・アインの速攻が結実

[4-4-2]や[4-2-3-1]の布陣での撤退守備、なおかつ横浜FMの2インサイドハーフをほぼマンツーマンで捕捉。これに加え奪ったボールを素早く前線へ送り、高く保たれた横浜FMの最終ライン背後を突くというクレスポ監督のゲームプランが、アル・アインの選手たちに浸透していた。

迎えた前半12分、アル・アインは自陣でスローインを獲得すると、このこぼれ球が横浜FMのDFエドゥアルド(センターバック)の背後に落ちる。エドゥアルドとの走り合いを制したMFソフィアン・ラヒミが横浜FMのGKポープ・ウィリアムと1対1の状況となり、同選手のシュートはポープに防がれたものの、セカンドボールをMFモハンメド・アルバルーシが横浜FMが守るゴールへ押し込んだ。

幸先良く先制したアル・アインは、前半29分にも自陣からのロングパスが前線で収まり、ここからの速攻でMFマティアス・パラシオスが横浜FMの最終ライン背後を突く。パラシオスのシュートはGKポープの股下を抜け、ゴールマウスに吸い込まれた。

このゴールはオフサイド判定により取り消されたものの、アル・アイン陣営の狙い通りの攻撃だったと言える。「我々はこのやり方(速攻)でACLを戦ってきましたし、決勝の舞台にたどり着きました。このやり方にはクオリティーが伴っていて、我々はこれに自信を持っています。今日に関してはなかなか得点機会がありませんでしたが(追加点には至りませんでしたが)、効果的な機会は作れたと思います」。このクレスポ監督の試合後会見コメントの通りに、試合は推移していた。

植中朝日 写真:Getty Images

持ちこたえられなかったアル・アイン

アル・アイン陣営にとって悔やまれるのは、特に中盤の選手の試合終盤における疲労度が高く、タイムアップの瞬間まで守備の強度を維持できなかったこと。クレスポ監督が初めて選手交代を行ったのは、後半アディショナルタイム。この時点でアル・アインは試合をひっくり返されていた。

試合後会見で、ある記者から交代カードを切るタイミングについて問われたクレスポ監督。「交代する必要が無いと判断し、試合を進めました。危険な場面も特に無かったと思います」と説明している。確かに後半途中までは目論見通りに試合を進めていたため、この同監督のコメントに概ね同調できたが、中盤の守備の強度を上げるための選手交代はすべきだったと筆者は考える。ゲームを締めくくるための策の乏しさが勿体なく感じた。

第2戦でクレスポ監督が違った采配を振るえるか。この点が見どころのひとつであり、両軍の運命を左右するポイントでもあるだろう。


渡辺皓太 写真:Getty Images