アメリカの税務・確定申告関連サービスは堅調な伸びを示している。IBISWorldが2023年10月に発表したレポートによると、過去5年間に年平均3.2%で成長し、2023年の市場規模は139億ドルに達している。2024年から2029年にかけても拡大を続ける見込みだという。

そんな中、主にフリーランスや自営業者向けに税務・確定申告のサービスを提供しているのがFlyFin AI社だ。アプリを銀行口座と連携すれば、AIが支出を自動的に検出・分析し、経費に計上・控除対象にするかどうかを聞いてくる。

Image Credits:FlyFin AI

人間が手作業で税務・確定申告を行うと、経費の申告を忘れてしまうケースがあるが、FlyFinならその心配もない。取りこぼしがなくなり、節税にもつながるという。同社によると、FlyFinユーザーは平均で7800ドルの節税に成功している。

「税務申告ぎらい」が創業・アプリ開発のきっかけに

FlyFin AIは2020年創業。共同創業者でCEOのJaideep Singh氏は、IBMなどでエンジニアやプロダクトマネージャーとして経験を積んだあとに独立した連続起業家。FlyFin AIは、彼が立ち上げた3社目のスタートアップだ。自身の経験から、フリーランスや自営業の税務・確定申告の大変さを理解していた。

Startup SavantのインタビューでSingh氏は、会社員時代には40分で終わっていた手続きが独立後は非常に煩雑になったと語っている。自身で行わなくてはならない税務申告手続きをつい先延ばしにしてしまい、申告期限の4月に間に合わず延滞金を支払うこともあったという。クレジットカードの明細やレシートなどのデータをスプレッドシートにまとめ、公認会計士に提出する作業が億劫だったのだ。また、公認会計士に支払う1500ドル(約23万円)という出費もネックだった。

Image Credits:FlyFin AI

エンジニアであり起業家である彼は、これを「AIや自動学習で解決できる問題」と捉え、税務・確定申告を自動化すれば大きな恩恵をもたらすことができると考えた。自身の苦労が、FlyFinの創業につながったわけだ。

FlyFinは2021年に800万ドルの資金調達に成功。 2023年にはBIG INNOVATION、REAL SIMPLE SMART MONEY AWARDS、US FINTECH awardsと数々の賞を受賞した。今やユーザー数は25万人を超えている。