2024明治安田J1リーグ第12節の全10試合が、5月6日に各地で行われた。同リーグ最下位(20位)の湘南ベルマーレは、本拠地レモンガススタジアム平塚で18位サガン鳥栖と対戦。最終スコア2-1で勝利している。
リーグ戦10試合ぶりの白星と、今季のホームゲーム初勝利を手にした湘南。今節も鳥栖に先制される苦しい展開となったが、何とか試合の主導権を手繰り寄せた。
湘南が今節手にした、今後に活かすべき成功体験とは何か。ここでは第12節鳥栖戦を振り返るとともに、この点について解説・論評する。
惜しくも無失点試合ならず
[3-1-4-2]の基本布陣でこの試合に臨んだ湘南は、鳥栖の攻撃配置の悪さを突き、キックオフ直後からチャンスを作る。基本布陣[4-2-3-1]の鳥栖はサイドバック、特にDF原田亘が自陣後方タッチライン際でパスワークに関わることが多く、ここを湘南陣営に狙われた。
前半10分、自陣ペナルティエリア手前でボールを受けた鳥栖DF山﨑浩介に、湘南MF平岡大陽が寄せる。これにより縦方向のパスコースを塞がれた山﨑が、自陣後方タッチライン際へ降りた原田へ横パスを送ったものの、これを狙っていた湘南DF畑大雅(左ウイングバック)がボール奪取。ここから速攻を繰り出せただけに、ホームチームとしてはこのチャンスを物にしたかった。
決定機を逃した湘南は、この直後の相手セットプレー(※)から失点という最悪の試合展開に。迎えた前半13分、鳥栖MF手塚康平のコーナーキックにFW富樫敬真がヘディングで合わせ、先制ゴールをゲット。湘南の今季リーグ戦初の無失点試合達成はまたもお預けとなった。
(※)コーナーキックやフリーキックなど、規定の位置にボールをセットしてプレーを再開すること
露呈した守備の課題
セットプレーか否かを問わず、自陣ペナルティエリアにおける湘南の守備には明白な課題がある。それはマークすべき相手選手とクロスボールを同一視野に収めるようなポジショニングや体の向きを整えられず、ラストパスを受ける相手選手に背後を突かれてはシュートを放たれていることだ。
この課題が顕著に表れたのが、5月3日の第11節鹿島アントラーズ戦。この試合の前半12分、自陣ペナルティエリアに立っていた湘南DF髙橋直也が、自身の背後を相手FW鈴木優磨にとられている。この場面でクロスボールは鹿島MF仲間隼斗に向かったが、鈴木に渡っていれば湘南は大ピンチを迎えていた。
後半5分には鹿島のコーナーキックからの2次攻撃で、ペナルティエリア内の湘南MF池田昌生がラストパスに気を取られたうえ鈴木に背後を突かれる。これにより鈴木のヘディングシュートを浴び、湘南は先制点を奪われた。
湘南は後半17分にも鹿島にセットプレー(フリーキック)を与え、ここでは湘南DF大岩一貴と畑のどちらが鈴木のマークを担うのかが曖昧に。最終的に大岩が自身の背後を鈴木に突かれ、同選手に追加点を奪われてしまった。後半22分にも鹿島の速攻から失点を喫した湘南は、最終スコア1-3でこの試合を落としている。
先に述べた鳥栖戦の失点シーンでは、ペナルティエリア内の湘南MF鈴木雄斗が、自身の斜め後ろから侵入してくる相手FW富樫を捕捉しきれていない。そもそもセットプレーにおけるゾーンディフェンス(※)をチーム全体で見直す必要がありそうだが、これに加えて各選手がクロスボールとマークすべき相手選手を同一視野に収めるような立ち位置、自身の背後に相手選手を置かないポジショニングを探るべきだろう。
(※)各選手が特定の相手選手に付かず、各々の担当エリアに侵入してきた選手に対して守備を行うやり方