転職が当たり前の時代になりつつある今、仕事との向き合い方を考え直す機会が増えたのではないでしょうか。
「好きな仕事と出会うには?」「社会人になるということは?」そんなことを考えさせてくれる書籍『転職ばっかりうまくなる』には、著者のひらいめぐみさんが過去に経験した6回の転職談がつづられています。
好きな人に囲まれて好きな仕事をするために、合わないと感じたら見切りをつける。ひらいさんは違和感を見逃さないよう意識していたといいます。
インタビューの後には「会社のためではなく、自分のために働く」というメッセージを受け取ったように感じました。前編では、ひらいさんの仕事観についてお話を聞きます。
「転職」は当たり前なのか?
『転職ばっかりうまくなる』では、自分の居場所を変えながら少しずつ自分に合う仕事や環境を見つけていくひらいさんの物語が書かれています。
「出版社『百万年書房』の編集者・北尾さんのオンライントークイベントに参加した際、本を出版したい人が北尾さんに原稿を読んでもらえる機会があることを知りました。私はイベントが終わると個人的に作っていた本をお送りし、北尾さんとカフェで直接お会いしました。
成り行きで転職を6回経験したことを話すと、『それを書こうと思ったことはないですか?』と言ってくださったのです。私は本にするほど転職を経験していないと思っていましたし、転職のことについて書こうと考えたこともなかったのですが、『同じような経験をしている人や、共感する人たちがきっとたくさんいると思いますよ』と言ってくださったんですよね。自分が思っているよりもこの話を必要としている人がいると感じ依頼を受けることにしました」
本書では、7章にわたってひらいさんの転職ストーリーが展開されます。計6回の転職、現職を含む7社での仕事を経験するなかで、特に印象的なエピソードとは?
「2社目の営業の仕事が特に大変でした。アルバイトから正社員になって初めての会社だったので慣れるまでに時間がかかりましたし、あのときは会社らしい会社に就職したのが初めてで、こういうものなんだと思っていました。
ただ、経験を重ねるうちに徐々に気持ちが楽になっていき、必ずしも入社した会社が全てではないということに気づきました」
退職理由の1位は「人間関係」
エン・ジャパンが2022年に「本当の転職理由」について調査を実施したところ、「職場の人間関係が悪い」が1番大きな理由だったといいます。ひらいさんが経験した過去6回の転職でも、共通して人間関係や職場環境など、仕事内容にはかかわらないところがきっかけだったと語ります。
「これまでの転職経験を通して感じたことは、仕事は人間関係が1番だということです。2社目の営業職では、仕事自体はやりがいを感じつつもなんとなく居場所がないように感じていました。
入社して間もないころ、社用携帯のロックが解除できなくなってしまったことがあり、当時相談できる人がいなかったため、庶務さんに相談しました。ですが、なにか困ったことがあるたびに庶務さんへ相談していたら、ある日上司からいちいち庶務さんに聞くなと怒られてしまって。誰に何を聞いたらいいかわからなかったのが新入社員の私にとっては大変でした」
それは、新進のビジネスを展開するベンチャー企業でも変わらなかったそうです。
「ベンチャーにいても、上司や入社年数が長い社員の人たちの発言力が強かったりするのを感じていました。表向きでは風通しがいいとされる会社でも、実際に働いてみないと人間関係や職場環境はわからないことが多いです」
仕事をすぐに辞めることができない場合もあるかと思いますが、限られた環境下でひらいさんは人との向き合い方やマインドセットを意識していたといいます。
「仕事での付き合いは友達とは違うので、1つ壁があることで気軽に向き合うことができました。合わない人がいても、仕事上の付き合いだからと割り切れることで、フラットに接するようにしていました。
あとは、誰かと意見が分かれてしまう場合は、すぐに伝えると感情的になってしまいかねないので、少し時間を置いてから言葉選びをして伝えるようにしています」