私の考えは日本が経済成長力を落とし続けていることによる国力の問題だとみています。端的に言えば、内需を通じた通貨の需要が盛り上がらず、海外からの直接、間接投資も増えないため、通貨需要が他国に比べて低いことが理由だとみています。物価も上がらず、企業は内部留保をしっかりため込み、銀行は貸出先不足に悩んでいます。このような日本円を誰が欲しいのでしょうか?

つまり円を株式市場に上場する株の売買に見立てると日本円は欲しくないので売りなのです。理論派の通貨量の説明ならROEとかPERといった会社の価値の算出基準こそが株価の決定要因であると説明するはずですが、実際の株式市場ではそんな計算通りの動きではありません。それらは指標にはなりますが、市場は思惑のぶつかり合いなのです。

個人的には植田総裁の珍妙な発言が円を売りたい筋には絶好の支援材料になったと思います。では円安がドンドン一方的に進むのか、ここはわからないのですが、シナリオは3つあると思います。1つは円売り筋がそろそろ飽きてくること、2つ目が2021年から続く対米ドル安のトレンドが今後も似たようなペースで続くこと、3つ目はかつてのソロス氏のような通貨戦争を仕掛けてくる輩が日本政府を相手に戦いを挑む公算です。

円売りに飽きが来るか、ですが、昨日、パウエル議長が利上げはいくら何でもunlikelyと何度か明白に述べていたので日米金利差はこれ以上開かないという観点に立てば飽きが来てもおかしくありません。ただ、2つ目のシナリオである今のトレンドを続ける可能性がまだあると私が思うのは日本がどんなに立ち向かっても金利差が大きく改善するのは1-2年かかるとみるのが妥当だからです。とすれば目先を見れば引き続き円安トレンドが正しいというシナリオはあり得ると思います。

3つ目の通貨戦争を仕掛ける輩が出るかどうかです。これは政府があと数回為替介入を施すと資金的に無制限に出せるような状況にならなくなります。枯渇するわけじゃないですが、為替介入用の準備資金ではないところから捻出の必要があります。ならば、政府の連続する介入で弾切れの頃を見計らって一気に巨額の資金で仕掛ければ10円20円は動くでしょう。その戦争に勝つ輩がいれば巨額の利益を得ることも可能です。

私は日本の世論がようやくこの円安は「ヤバいぞ」と気がついてくれたことは進歩だと思います。当地カナダで日本の食材やシャンプーや美容関係の商品がいたるところでかなり安い金額で並べられていることにこの私でも喜びではなく、「マジか!」と思う日々であります。韓国の商品よりも安い日本製では話にならないでしょう。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年5月3日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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