円が対ドルで乱高下しています。政府日銀による2度にわたる合計8兆円規模の介入が理由とされています。日本はゴールデンウィーク中でニュースが少ない中、為替関連のニュースであふれています。いったいどう見ればよいのか、私の見方を展開してみたいと思います。

円の評価について米ドル独歩高というのがメディアが現在多く使う表現ですが、実態としては円の独歩安といってよいでしょう。対ユーロは2020年初めは110円台でしたが、今は170円、英ポンドは120円台が今は200円、韓国ウォンは0.08円台が0.11円台、中国人民元に対しても1.5円が2.2円です。しかも2020年頃から長期的にほぼ直線で円独歩安トレンドを形成しています。

では今回大規模介入したのは何のためか、といえば政界財界そして国民まで留まるところを知らない円安の行方にようやく懸念を示し始めたからでしょう。一部の専門家は150円ぐらいの時に介入しておけばよかったという声もありますが、個人的にはいつやっても同じだと思います。なぜならファンダメンタルズは何一つ変わっていないからです。

植田総裁と神田財務官 NHKより

今回衝撃だったのは日銀の政策金融決定会合で植田総裁が円安が物価にもたらす影響は現状軽微という趣旨の意見を述べたことでした。これには私も即座に異論を述べましたが、日経は社説で総裁の発言について「物価情勢や政策運営の説明がやや抽象的で、すれ違いの一因となった」と批判しています。

為替は通貨量の比率というのが理論派の主張ですが、それなら110円台程度、日経均衡為替レートは23年7-9月データで133円程度にしかならず、理論派の主張からは大きく乖離します。為替は理論では交換比率が基礎にはなりますが、短期、長期の国の経済成長性など多数のマクロデータと目先の要因やファクターが絡みます。現在の円安は「アメリカの金利が高いからだろう」という説明なら対人民元でも安い円の説明がつきません。