EV普及がもたらす持続可能な社会
大気汚染は人々の健康だけでなく、生活や農作物の生産にも甚大な影響を与える。UNICEFは2019年6月の報告書で、大気汚染による早期死亡に起因する経済的損失が2,150億米ドルに達すると推定している。
同報告書では、アフリカで大気汚染を死因とする人の数が、1990年の16万4,000人から2017年の25万8,000人と、30年近くで57%増加していることも指摘。今後、アフリカの人口11億人は2050年までに倍増するとみられ、人口と消費の増加や産業の成長が、この大気汚染レベルをさらに高める可能性がある。
そこでEverlectricは、持続可能な社会を実現するための具体的な取り組みとして、計画停電への耐性もある再生可能エネルギーを活用している。オーストラリア発の小売業大手Woolworthsと提携し、デンマークに本社を構える物流会社DSVの広範な太陽光発電インフラを利用して、EVパネルバンを大規模展開した。この商用EV車は1回の充電で最大300kmの走行が可能で、Woolworthsの炭素排出量を年間40万kg以上削減する可能性がある。
環境に配慮したクリーンな配送を通して、Woolworthsは2040年までに自社のネットゼロ排出、DSVは2050年までに事業全体のネットゼロ排出の達成を目指している。
EV・充電インフラの技術革新とサービスの向上へ
Everlectricは、独自のビジネスモデルに基づいてEVを普及させること、そしてEVを通して環境への負荷を減らし、エネルギー危機を解消し、持続可能な社会を実現することを目指しているという。2023年時点で、Everlectricがサービスを提供しているのはWoolworthsといった一部の企業に限られている。Accountancy SAによるとEverlectricの市場占有率はわずか2%未満であり、市場拡大はまだまだ可能だろう。Independent Onlineの取材で、同社は今後5年間で現在の百台から数千台に増やすことを目指すと語っている。
Ndia Magadagela氏は、WoolworthsやDSVとの提携により、3年にわたって実施されたEVの試験運用で、EVが商業的にも、技術的にも、経済的にも実行可能であることを証明できたという(参考)。もはやEVは、環境意識の高い層のためにあるものではない。
Everlectricは今後、幅広い業種や業態の企業や、個人にも、魅力的なサービスを提供するほか、クライアントの需要に合わせたEVを提供していく方針だ。また、自動車排出ガス削減が求められるタクシー業界にも、EV普及の可能性を見出しているようだ。
Everlectricの運用エリアは、まだ南アフリカ国内にとどまっている。しかし、その画期的なビジネスモデルと環境問題解決への寄与は、世界にも十分受け入れられるものだろう。EVや充電インフラの技術革新とサービスの向上が功を奏し、アフリカ大陸ひいては世界に、その影響力を及ぼす日が待ち遠しい。
参考・引用元:Everlectric
(文・gracen)