グローバル化が進み、英語力が必要とされるビジネスシーンが増えてきている。そんななか、X(旧Twitter)では英語スキルに関するポストがたびたび話題に。たとえば、少し前に投稿された下記のポストは、2.5万いいねを獲得し、ツリーでも議論が白熱していた。
<「英検2級」や「TOEIC700」は、「英語ができる事」ではなく、「できない事」を自白する資格なので、履歴書には書かない方が良い>
<学習のベンチマークとして使うには優れた指標だと思うけど、このレベル帯だと英字新聞も学術論文も読めないし、BBCニュースも聞き取れないので、使い物にならなかった記憶がある>
このポストには、さまざまな反響があり、
<会社のレベル次第だろうけど、普通の中小企業なら履歴書に書いたほうがいいと思うなあ>
<TOEIC700は採用ボーダーになってる事多いから絶対書いた方がいいって転職サイト見てると思いますな。ポテンシャルはあるって思われるスコア>
というように、否定的な意見が多く目立っていた。一方で外資系企業に応募するとなった場合は、たしかに不利なレベルとの意見も見受けられる。
「英検2級」や「TOEIC700」は、果たして本当に“英語ができない”と思われる足切り基準になることがあるのだろうか。また面接時に書いてしまうと不利になる場合、逆に有利になる場合はどんなときなのか。キャリアコンサルティングなどを行うKoyoriキャリアワールド代表の木村千恵子氏に聞いた。
IT企業やグローバル企業では不利になる可能性が
まずは英検2級やTOEIC700では、どんな英語スキルが身に付いている状態なのか。
「英検2級とTOEIC700のレベルには多少の差があるのですが、TOEIC700を持っている人の場合だと、海外の取引先の人との英語でのメールや書類のやり取り、日常会話程度なら対応可能なレベルといえるでしょう。一方、日常的に英語で海外の人と会議があるなど、ビジネス英語でのコミュニケーションが求められる場合は対応が難しいと感じるかもしれません。もちろんTOEIC700でも文法は弱いけれども会話が得意な人もいると思いますので、個人差はあります」(木村氏)
ちなみに話題となったXのポストでは、英検2級とTOEIC700が同程度のレベルのように読める。ただ、欧州での言語力評価の統一基準であるCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)レベルに当てはめると、英検2級は「A2」「B1」レベルに相当し、TOEICリスニング・リーディングテストのスコアに換算すると990点満点中225~780前後程度となっている。(ETS TOEIC「TOEIC Program各テストスコアとCEFRとの対照表」、公益財団法人 日本英語検定協会「英検CSEスコアとは」を参照)
では具体的に、英検2級やTOEIC700を履歴書に書いたり面接時にアピールしたりすると、どんな企業・業種では不利になってしまうのか。
「IT企業や商社に勤めている方で、海外との取引をメインに行うポジションだと英検2級やTOEIC700では通用しないと思われてしまう可能性があります。特にIT企業は英語をメインで使用している企業も多いです。たとえば海外に本社がある日本の支社で働く場合、海外の製品やサービスを日本に導入するとなった際に、常に本社と英語でコミュニケーションを取らなければいけなくなります。IT企業のなかには勤務地が日本国内の場合でも外国人材を積極的に採用しているところがあり、日本語レベルはそこまで求めないけれども、英語での会話能力を重視されることもけっこうあります。なかでもエンジニア職などは、そのような傾向が強いです」(同)
逆に英検2級やTOEIC700でも対応できるような英語を使う仕事にはどんな業種があるのだろう。
「一例ですが、観光業や宿泊業でインバウンドのお客様を相手にする場合であれば、企業からは十分な英語力が備わっている人材だと判断されることが多いでしょう。インバウンド客相手の物販や観光ガイドであれば、ビジネス英語ほどの高い英会話力は求められない傾向があるからです」(同)