就職や昇進試験合格を目指して、 TOEIC Listening & Readingスコアを伸ばそうと努力しているとき、英語学習の本当の目標や、学びの楽しさを忘れてしまうことがあるかもしれません。

英語を学ぶ目的は、人それぞれ。「英語を話したい私に、TOEICは関係ない」という人もいますが、それは正しい考えでしょうか。

英語によるコミュニケーション力を検定するTOEIC Programを「多くの人が誤解している」と、日本で同テストを実施するIIBC(一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会)の役員をつとめる永井聡一郎さんはいいます。

U-NOTEは、IIBCの永井さんと、TOEIC Testsの英語4技能で、基準スコアを取得した受験者に贈られる「IIBC AWARD OF EXCELLENCE」2022年度受賞者のおひとりである室井梨那さんにそれぞれお話をうかがいました。

その模様を、4日連続で紹介します。

【5月4日(土)18:00公開】

本当に日本は国際化してる?ーー日本でTOEIC Programを実施するIIBC役員が語る‟英語公用化の現在地

【5月5日(日)18:00公開】

英会話の楽しさが不得意科目を学ぶ動機になったーー「IIBC AWARD OF EXCELLENCE」受賞者室井梨那さんインタビュー【前編】

【5月6日(月)18:00公開】

「できない原因」を見つけて弱点を克服しようーー「IIBC AWARD OF EXCELLENCE」受賞者・室井梨那さんインタビュー【後編】

TOEIC L&R対策をがんばっても「英語は話せない」


TOEIC L&R公開テスト会場の様子

ーーTOEICでハイスコアを取れたけれど、英語を話せないという人もいると聞きます。これは事実でしょうか?

永井:全員ではありませんが事実です。みなさんがおっしゃる「スコア」が、英語を聞いて、読むという理解力を測るTOEIC Listening & Reading Test(以下、TOEIC L&R)のスコアのことであれば、私たちも「そうですよね」と考えています。理解力のスコアが高くても、「話せる」ようになるためには、一定期間、話すための訓練トレーニングが必要です。

ーー英語を話せるようになりたい人にとって、 TOEIC L&Rのスコアは無意味……と考えるのは早計でしょうか。

永井:話すための訓練に理解力は不可欠ですから、努力は決して無駄ではありません。TOEIC L&R400点の人、600点の人、800点の人が英語を話すトレーニングをした場合、スコアの高い人の方が能力を顕在化するスピードが早いです。

TOEIC L&Rに向けて「インプットの学習」を繰り返した方は、英語を話すときに使う「英語の在庫」をたくさん持っていらっしゃる。だから、話すトレーニングをして、その引き出しを開けることが必要です。

ーー TOEIC L&Rが「総合的な英語力」を測るもの、という誤解があったようです。

永井:もちろん、TOEIC L&Rから、その人の「話す」「書く」力をある程度推し量ることができます。しかし、あくまでも「聞く」「読む」技能を測るためのテストなので、自分の発信力を知りたい場合は、TOEIC Speaking & Writing Tests(以下、TOEIC S&W)で直接測ることを強くおすすめします。求められたスコアをクリアして「やった!英語学習卒業だ!」と完結すると、本末転倒になる可能性があります。TOEIC L&Rで600点が見えてきたら、TOEIC S&Wを受け、総合的な英語力の習得を目指してください。

英語の「技能」は「聞く」「読む」だけではありません。TOEIC Programでは、「話す」「書く」英語力を測るTOEIC S&W も実施しています。

ーーほかに、「誤解されている」と感じていることはありますか?

永井:たとえば「高いTOEICL&Rスコアを持っているのに、仕事ができない」と評価を受ける方もいらっしゃいます。TOEIC Programは、あくまでも英語のスキルをスコア化するテストで、仕事の能力を測るテストではありません。

ーーハイスコアの方を職務においても有能だと期待してしまいますね。

永井:語学力を高めようと努力できる方であることは間違いありませんし、高い英語のコミュニケーション能力をもっています。これは前提として重要なスキルです。

「英語で仕事ができる」ようになるためには、その会社や業種で求められる業務スキル、知識、ネゴシエーションやプレゼンテーションのスキル、異文化への理解力、リーダーシップなどを身につけ、それを英語で発揮できるようにしなければなりません。